海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか【上】

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海兵隊の見直し

 海兵隊は、一般的に海から敵地へ上陸する「殴り込み部隊」というイメージがあるが、現在、むしろ最大の特徴は、司令部隊、陸上戦闘部隊、航空戦闘部隊、兵站部隊という四つの部隊が一体的に運用される海兵空地任務部隊(MAGTF)という組織構成をとることである。MAGTFは、大規模紛争に対応する海兵遠征軍(MEF)、中規模紛争に対応する海兵遠征連隊(MEB)、小規模紛争や人道支援・災害救助に対応する海兵遠征部隊(MEU)と、紛争の規模に合わせて三つのタイプをとる。このようなMAGTFの組織編成によって、海兵隊は、自然災害から大規模紛争まで、様々な種類の緊急事態に、即時にそして柔軟に対応することができるというのである。

 海兵隊の歴史は、米国内の不要論に対する自分たちの存在の正当化・役割再定義の繰り返しであった。アジア太平洋戦争や朝鮮戦争で「水陸両用作戦」を実践した海兵隊は、ベトナム戦争後の不要論や批判に対して、グローバルな即応部隊として自らを再定義し、さらに冷戦後の不要論に対しては、災害救助・人道支援、さらにはテロとの戦いに向けて自らを変革してきたのである。

 2000年代以降、中東での対テロ戦争に従事した海兵隊は、「第二の陸軍」としてまたも米国内で批判にさらされていた。こうした中、海兵隊は西太平洋における中国との対立の中に新たな役割を見いだした。

近年、中国は南シナ海・東シナ海への海洋進出を進めるとともに、短距離ミサイルや対艦ミサイルなど「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)と呼ばれる米軍の介入を妨げる能力を向上させてきた。今日、日本列島から台湾、フィリピンにかけての「第一列島線」上にある在日米軍基地は約2000発もの中国軍のミサイルの射程内にあり、小笠原など「第二列島線」上のグアムも狙える能力も備えつつある。

 当初、中国軍に対抗する上で「エア・シー・バトル」が構想されたように、米軍の戦略で重視されていたのは、空軍や海軍であった。しかし、この後、中国の軍事力の向上によって西太平洋における米軍の空や海での優位が揺らぐ中、陸軍や海兵隊が巻き返しを図る。これまでのような海上における米国の軍事的優位が前提でなくなる中、海兵隊は、制海権を確保し、中国軍の海洋進出を阻止する役割を担おうとしている。

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