海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか【上】

この記事の執筆者

海兵隊の新作戦構想EABO

 バーガー海兵隊総司令官は、昨年の「計画指針」において、中国を念頭に、潜在敵国の長距離射撃能力の向上に対して、海軍と連携することで、制海権を確保し海洋拒否を実行することを掲げた。そのため、海兵隊は、中国など潜在敵国のミサイルの射程内で活動するという。そしてバーガー総司令官は、「敵の精密打撃能力の向上を踏まえて、陸上での我々の兵力を分散しなければならない」と強調している。潜在敵国は、「我々の前方の固定された脆弱な基地を標的にすることを意図している」ので、「集中した、脆弱な、そしてお金のかかる前方のインフラやプラットフォームに依存しない新しい遠征型の海軍力の構造を発展させる」必要があるというのである。注目すべきことに、海兵隊の組織編成の特徴であるMAGTFについても、「すべての危機における唯一の解決策ではありえない」としてその見直しを示唆している。(38th Commandant’s Planning Guidance)。

こうした中、近年、海兵隊が追求している新たな作戦構想が、「Littoral Operations in Contested Environment」(LOCE:対立的環境下における沿岸作戦)と「Expeditionary Advanced Base Operations」(EABO:遠征前方基地作戦)である。特にEABOは、対立的環境の中、分散された小規模の部隊で、要衝となる離島を占拠し、ミサイルやセンサーを配備したり戦闘機の出撃拠点や給油拠点にしたりするなど、一時的な即席の基地を構築することで、制海権の確保や中国軍の海洋進出を拒否しようとするものである。海兵隊は、このような作戦を実施するにあたり、移動式のミサイルであるHIMARS(高機動ロケット砲システム)や無人機・無人艇、サイバーといった最新の技術を駆使しようとしている。

最近、沖縄では、EABOの訓練が活発に行われている。昨年2019年には、沖縄県北部の離島である伊江島で3月、8月、12月と三回にわたって大規模なEABOの訓練が行われた。そこでは、MV22オスプレイによる兵員の輸送、パラシュートによる海兵隊員の島への上陸と飛行場の占拠、大型ヘリコプターCH53Eによる物資の輸送と戦闘機F35の給油地点の設置、輸送機C130によるHIMARSの輸送といった一連の訓練が行われた。訓練を行った沖縄を拠点とする第31海兵遠征部隊(31MEU)のロバート・ブローディ司令官は、「もし太平洋で紛争が起これば、31MEUがその第一陣になるだろうし、島の奪還というEABOコンセプトを使用するだろう」と述べている(USNI News, April 23, 2019)。

沖縄でのEABO訓練実施には、実戦のためのリハーサルのみならず、中国に対するデモンストレーションという意味合いもあったであろう。もっとも、海兵隊関係者が昨年筆者に話したところによれば、EABOはただちに実施できるには至っておらず、その完成にはあと5年かかるだろうということだった。

【「下」に続く】

この記事の執筆者