地方紙で改正賛成は僅か
多くの社が、眼前のウクライナ・ロシア戦争や収束しないコロナ感染症といった内外の「危機」と、それを意識しての改憲論に触れる。そのなかで明確に賛成するのは北國(石川)「憲法施行75年 『自ら守る』意思を明確に」で、ほかに山陽(岡山)「憲法記念日 合意得ながら議論深めよ」などと改正議論を進める立場に立つものがある。
改憲反対でわかりやすいのは9条を見出しに掲げた、神奈川「憲法施行75年 これ以上9条を壊すな」、神戸(兵庫)「憲法施行75年 9条の意義を語る言葉を探して」だ。平和憲法・平和主義を掲げたものとしては、北海道「きょう憲法記念日 平和の理念今こそ大切に」、秋田魁「憲法施行75年 平和主義後退させるな」、河北新報(宮城)「平和憲法と安全保障 『同盟の恐怖』克服する力に」、新潟日報「憲法施行75年 戦争放棄の理念今こそ」、山梨日日「憲法施行75年 平和守る理念 危機の時こそ」、南日本(鹿児島)「憲法施行75年 平和主義の理念堅持を」、長崎「憲法記念日 色あせぬ平和主義の理念」、熊本日日「憲法施行75年 平和主義の価値再確認を」、沖タイ「憲法施行75年 いまこそ平和主義を貫け」がある。
そのほか多くは議論不足の指摘や改正の必要性に疑問を呈するもので、中国(広島)「緊急事態条項 憲法の改正まで必要か」、京都「憲法記念日に 浮足立たず、向き合う時だ」、徳島「憲法施行75年 存在と意義を意識したい」、愛媛「施行75年の日に 改正の機は熟したといえるのか」、高知「憲法施行75年 「なし崩し」を危惧する」、西日本(福岡)「憲法施行75年 広く、深く論じなければ」がある。
なお、琉球新報は〈施政返還50年〉の見出しで連続社説を掲載する。3日は「憲法と沖縄 地方自治規定が鍵握る」だった。中日(愛知)・東京も連続社説を組んでおり、3日が「憲法記念日に考える~良心のバトンをつなぐ」、4日が「憲法施行75年に考える~『平和国家』は色あせず」であった。
このほか信濃毎日(長野)は「憲法記念日に 物言う自由を手放さない」と言論の自由に絞り昨今の日本国内の表現規制に危機感を示す。福島民友「コロナ禍と子ども~安らげる居場所づくり急務」と憲法には触れず〈こどもの日〉に向けた社説であった。
拙速な改正議論を危惧
全体の多数を占めるものは、理念の再確認を求めるもので、反対に分類したものと大差はないともいえる。なお、見出しが似ているのは、共同通信の配信を利用していることとも関係していよう。以下、列挙する。
東奥日報(青森)「憲法施行75年 危機にこそ理念再確認を」、デーリー東北(青森)「憲法記念日 試練に直面する平和主義」、岩手日報「憲法施行75年 危機下に冷静な議論を」、山形「憲法施行75年 危機にこそ理念再確認」、福島民報「憲法施行75年 原則は守られているか」、茨城「憲法施行75年 危機にこそ理念の再確認を」、上毛(群馬)「憲法施行75年 危機にこそ理念確認を」、下野(栃木)「憲法施行75年 国民的議論で理解深めよ」、静岡「憲法施行75年 視野広く冷静な議論を」、岐阜「憲法施行75年 危機にこそ理念再確認を」、北日本(富山)「憲法施行75年 改憲の是非熟考せねば」、福井「日本国憲法施行75年 危機にこそ理念踏まえよ」、山陰中央(島根)「憲法施行75年 理念再確認の議論を」、日本海(鳥取)「憲法施行75年 危機にこそ理念の再確認を」、大分合同「憲法施行75年 国民の目で問い直そう」、宮崎日日「憲法施行75年 危機にこそ理念の再確認を」。
以上が、2022年5月3日付各紙の社説見出しのすべてで、題号に都道府県名が入っていないものはカッコで示した。あわせて全国の新聞を知る機会にもしていただきたい。なお、東京以外では、千葉・埼玉・滋賀・大阪・奈良・和歌山・三重・香川の各府県については、該当する社説掲載紙がなく、これらを除く38道府県のうち、沖縄・福島・青森は2紙が対象で、その他は1紙が対象である。全国紙と呼ばれる東京発行紙は次に掲げる(中日・県民福井・東京は共通社説、日本海・大阪日日は共通社説)。