全国紙は改憲に振れる
地方紙の多くは「改憲」に反対もしくは否定的の立場を明らかにしているのが大きな特徴であるのに対し、在京(全国)紙は反対の立場は毎日「危機下の憲法記念日~平和主義の議論深めたい」だけで、朝日「揺らぐ世界秩序と憲法~今こそ平和主義を礎に」も否定的ではある。産経「憲法施行75年 改正し国民守る態勢築け~『9条』こそ一丁目一番地だ」、読売「憲法施行75年 激動期に対応する改正論議を」は賛成、日経「人権守り危機に備える憲法論議を深めよ」は中間的な立場である。世論調査で改憲賛成が過半数を超える、現在の日本社会の空気感を現わしているともいえよう。
サンフランシスコ講話条約締結の「屈辱の日」(4・28)から、憲法記念日(5・3)を挟んで沖縄が返還された祖国・本土への「復帰の日」(5・15)と続く。それは年代でも同じ順番だ。その真ん中に位置する日本国憲法は、沖縄を除く46都道府県に住む日本国民の代表者によって制定された。一方、沖縄は施政下の27年間「無憲法」時代を過ごすことになる。その意味では復帰50年は、日本国憲法の県内施行50年でもあるということだ。
冒頭に触れたウルトラマンの脚本を担った沖縄出身の金城哲夫や上原正三は、作品の中で「抑圧されし者」を繰り返し扱っている。いま「危機」を乗り越えるために沖縄に期待されていることが、自衛隊の南西シフトに代表されるように、本土防衛のための「捨て石」だとすれば、その構図は77年前と全く変わらないことになる。あるいはコロナ禍のずば抜けて高い感染率も、貧困による抗体力に問題があるとすれば、それもまた歪な経済構造に押しとどめられる状況に直結する。各社社説のほとんどが触れる「平和」の内実を、沖縄県民の立場から実現することが、日本の平和を実効あるものにすることだと考える。
【本稿は5月14日付「琉球新報 メディア時評」を転載しました】