排除する者とされる者―差別と嘲笑のまなざし

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【おすすめ3点】

■復帰50年 沖縄子ども白書2022(かもがわ出版)

児童福祉、保育、学校教育、医療などの専門家の活動報告

■沖縄とセクシュアリティの社会学(玉城福子、人文書院)

ポストコロニアル・フェミニズムの視点から沖縄を問い直す

■なぜ基地と貧困は沖縄に集中するのか?(安里長従・志賀信夫、堀之内出版)

貧困問題と基地問題を貫く差別の歴史的構造を解き明かす


辺野古新基地建設に反対し、座り込みを続ける人たちを揶揄する実業家のツイートに28万超の「いいね」がついた。この約1カ月後の11月。南西諸島では過去最大規模の日米共同統合演習が行われた。領土を守る備えが進む一方、そこで暮らす人々の避難確保のめどは立っていない。日常の生活空間が戦場になる、という切実なリスクと向き合わされている島々の住民に、娯楽として「反基地運動」を消費するネット世論の熱狂はどう映っただろう。

元中学教諭の喜屋武幸は『沖縄子ども白書2022』で、辺野古新基地建設が地域の子どもに与える影響を自身の経験に基づいて報告している。

総合学習で基地問題をテーマにしたいと提案すると、政治的なテーマは避けたいと考える同僚だけでなく、保護者からも「もう誰も傷つきたくはない」と拒まれた。基地建設をめぐって地域が分断されてきた痛みが、住民には深く刻まれている。

辺野古の浜で開いた授業が新聞記事に掲載されたとき、「埋め立ては嫌だ」と話した生徒のコメントに対し、保護者を名乗る人物からクレームの電話が学校に寄せられた。職員全員が集められ、管理職から「配慮」を促された。

学校でも地域社会でも「基地問題」に対する言葉が奪われていくなか、辺野古の基地ゲート前の座り込みを見物していた数人の男子生徒がいた。彼らから話を聞いた喜屋武は「生徒たちには学びたいという欲求がある」と感じた。だからこそ、地域の人も教師も、誰も語らない基地問題を自分たちで学びに行ったのだ、と。喜屋武は「基地問題」の授業に臨む。初回は静まり返り、笑顔もなかった。終了後、追いかけてきて「これって必ずやらなくてはいけないんですか」と小さな声で尋ねる生徒もいた。次の授業では、匿名で書いた全員の意見を紹介した。いろんな意見があることを知り、生徒たちは吹っ切れたように自由に語り始めた。

生まれたときから「基地問題」という抑圧の中で育った子どもたちに、大人はどんな人生のモデルを示すことができるのか。国が決めたことだから他に選択肢がないと諦め、基地のない未来を想像し、描くことができない大人の姿。それこそが「最大の基地被害」だと喜屋武は結ぶ。

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