犠牲を強いるのは誰なのか~民主主義の現在地

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【おすすめ3点】

■越境広場10号(同刊行委員会)

 鼎談 金平茂紀×呉世宗×仲里効

■沖縄は日本だ、沖縄が日本だ(真藤順丈、ニューズウィーク日本版6月28日号)

小説「宝島」執筆をめぐる秘話と沖縄への思い

■中国は尖閣・沖縄を侵略するか!?(泉川友樹、八重山毎日新聞)

中国の台湾や沖縄へのスタンスや動向を解説


コロナ禍で疲弊した社会の先に、戦争の槌音が聞こえる。そんな不穏な空気に包まれた沖縄で県知事選が繰り広げられている。ロシアによるウクライナ侵攻は世界の流れを変え、日本もあっという間に大幅な軍備増強が既定路線になった。この影響をもろに浴びるのは「一体化した日米」と「中国の脅威」がせめぎ合う沖縄だろう。

「越境広場10号」の鼎談で琉球大の呉世宗教授は、沖縄の日本復帰とは何かを考えるキーワードに「一体化」と「系列化」を挙げる。

1969年の日米の沖縄返還合意は「沖縄の米軍基地はそのままに、かつ自由に使用でき、さらにはお金さえ日本政府に支払わせる」取り決めで、実質的には「日本とアメリカが合意した返還構想に沖縄を組み込んでいく試み」だった、と呉は論じる。つまり、「一体化したのは日米なのであって、沖縄とではなかった」。一体化した日米が沖縄を共同管理する体制の下、沖縄の企業や労組、政党も系列化によって日本と結び付けられていく。

鼎談では批評家の仲里効が、写真家の東松照明がかつて吐露した復帰後の沖縄への懸念を紹介している。日本の戦後社会は政治から文化までアメリカを内面化した「アメリカナイゼーション」そのものである。そこへ「復帰」する沖縄は結局、アメリカから脱しようとして「もう一つのアメリカ」に帰ったにすぎない。そうなると、米軍統治期にアメリカに抵抗して形作った沖縄の個性は「復帰」によって果たして守ることはできるのか、と。

復帰50年の今夏の参院選。沖縄選挙区は自公候補が敗れ、社民党とれいわ新選組の比例代表の得票数は、沖縄県が全国で最も高かった。この民意は何を示唆しているのか。

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