【おすすめ3点】
■沖縄戦と島田叡 教科書記述に潜むもの(川満彰、沖縄タイムス)
沖縄戦時の官選知事・島田叡氏の「負の側面」を解説
■沖縄 戦火の放送局(渡辺考、大月書店)
日本放送協会沖縄放送局長の手記をもとに、戦争と放送の関係を問う
■台湾有事に日本は戦場になる――が既成事実化し始めた危険度 水面下で進めてはならない台湾有事対応、徹底した議論を(松村五郎、JBpress)
案の定と言うべきか、沖縄県の玉城デニー知事が7月に中国を訪問したことにネット上で罵詈雑言が飛び交った。官房長官会見でこんな質問をする記者もいた。
「中国共産党序列2位の李強首相が(玉城知事との)会談に応じたことは、中国が沖縄を取り込み、日本政府に揺さぶりをかける狙いがあるという指摘もあるが」
これに松野博一官房長官は、河野洋平・元衆院議長を代表とする訪中団に玉城知事も加わる形で面会した、と説明。様々な交流を歓迎し、進展を期待する、と冷静に応じていたのが印象的だった。
確かにいま、沖縄の帰属問題を論じる中国メディアの意図は見え見えだ。その一方で、沖縄が中国に取り込まれる、という日本側の疑心はどこから生まれるのか。「日本」を守るため繰り返し犠牲を強いてきた沖縄に対する後ろ暗さの裏返し、と見るのはうがち過ぎだろうか。こうした異端視が沖縄内部にどう作用し、その結果、得をするのは誰なのか、よく考えてもらいたい。
沖縄戦をめぐっても、いまだに沖縄との溝は埋まっていない。来年度から使われる小学校6年生「社会」の一部の教科書で、沖縄戦時の官選知事・島田叡が「とても勇気のある人」と表現されていることに沖縄戦研究家の川満彰は強い違和感を示す(6月21~23日『沖縄タイムス』)。
1945年1月末に赴任した兵庫県出身の島田をめぐっては、沖縄戦末期に周囲の部下らに「生きろ」と呼びかけたエピソードなどが伝わり、人格者として評価されることが多い。これに対し、川満は島田の公人としての戦争責任を問う。例えば、法的根拠のない「義勇隊」の結成に島田が積極的に関与し、召集されていない住民を戦場に駆り立てたと指摘する。さらに、沖縄戦末期に島田が自殺したとの説に基づき、戦後の住民保護責任も放棄された、と批判する。
だが見方を変えれば、この上なく理不尽な職務をあてがわれた官吏が、すべてを受け入れ、最後まで国家に忠誠を尽くした、と捉えられなくもない。正直、私は島田に同情を禁じ得ない。だが彼を「英雄視」する気にはなれない。自らの責任や判断の重大性を十分認識していたであろう島田が、それを望んだだろうか。