南西諸島は「無人島」か

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「無人機戦争」

どうやら防衛省は、「台湾有事」に備えて南西諸島に攻撃型の無人機を本格的に投入する計画に着手したようである。報道によれば、これまで自衛隊の無人装備の活用は「警戒監視」などに限られてきたが、「23年度から攻撃型や偵察型」などの機種を試す方針に転換したという。なぜなら、南西諸島などの島しょ部が「多数の無人装備で攻撃される恐れがある」からである。

これに対し、人員確保で困難をかかえる自衛隊にあっては、「南西諸島など広い範囲をなるべく人手に頼らず防御できる」体制を構築することが急務となっており、無人機能を備えた装備品の「早期の部隊配備」を目指すという。(『日経新聞』10月9日)つまり、この計画の核心は「無人機で攻撃を受けた場合に無人の装備で対応できる能力を備え、人的な被害を極力伴わないようにする」ところにある。

 要するにこの計画では、南西諸島が「無人機戦争」の戦場となることが想定されているようである。それでは、南西諸島は「無人」なのであろうか。言うまでもなく、この戦場には160万近い生身の人間が日々の生活を営んでいる。防衛省の計画は自衛隊員の犠牲を極力少なくすることのみが念頭にあり、膨大な島民が無人機の犠牲になるであろうことは全く眼中にないかのようである。ここまでくれば、差別の域をこえ、文字通りの「人間存在の無視」と言う以外にない。

米軍なき台湾

無人機の実現には日米の連携が不可欠とされているが、それでは「台湾有事」の際に米軍や海兵隊はいかに対応するのであろうか。根本的な疑問は、台湾が真に危機に直面しているのであれば、なぜ米軍は台湾本島に基地を設けないのか、という点にある。米軍が注力しているのは南西諸島やフィリピンなど「周辺地域」の軍備強化であり、台湾にも軍事支援を増大させているが米軍本体のプレゼンスはない。そもそも、一定の“あいまいさ”を残しつつも台湾防衛に肩入れすることを取り決めた台湾関係法を有する米国にとっては、台湾有事は何よりも「米国有事」のはずである。なぜ米軍は台湾に直接的な関与を行わないのであろうか。

 おそらくは、米軍の基本戦略はウクライナの場合と同じく、「セッティング・ザ・シアター」(戦場を準備する)なのであろう。つまり、米軍は同盟軍の訓練や演習の実施、物資の事前配置、作戦維持の拠点の設置などを担うが、戦場で戦うのはあくまで同盟軍である。つまり、「アジア人同士の戦い」が想定されているのである。冷静に考えてみれば、台湾を防衛するために膨大な数の米兵の棺がワシントンに戻ってくるなどということを、「内向き志向」の米議会や世論が許容するはずがないであろう。

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