防衛省のジュゴン調査は十分なのか

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新基地建設が進む沖縄本島北部の名護市沿岸で、国の天然記念物で絶滅危惧種のジュゴンのふんが見つかった。貴重な生態は守られるのか。


沖縄県自然保護課によると、ジュゴンのふんが見つかったのは名護市久志の沿岸部。米軍普天間飛行場の代替施設建設のため埋め立てが進む同市辺野古の南西約3キロの海域だ。マリンレジャーをしていた人が昨年7月、海面に漂うなどしていたのを見つけて県に連絡。ジュゴンのDNAが検出された。

「ジュゴンが(新基地建設予定地の)大浦湾周辺を回遊している可能性も考えられる」

 県が調査結果を発表した4月6日、玉城デニー知事はこう指摘し、沖縄防衛局にジュゴンの生態調査の拡充を求めた。

防衛省の調査では2007年以降に沖縄近海で3頭のジュゴンが確認されていた。このうち1頭は工事開始直後の15年以降、別の1頭も護岸工事が進んだ18年以降は行方がわからない。残る1頭は19年に死んでいるのが見つかっている。

「沖縄のジュゴンは音や振動など人間の活動に敏感です。新基地建設の工事の影響はかなり大きいと考えています」

 こう話すのはフィリピンやタイ、沖縄で長年、ジュゴンの生態調査をしてきた向井宏・北海道大学名誉教授だ。

 それでも、防衛省の辺野古の埋め立て予定海域周辺調査では20年に計200回以上、ジュゴンの鳴き声の可能性が高い音を検知した。この際、県は工事を中止し、ジュゴンへの影響を調査するよう再三求めた。が、姿や食(は)み跡が確認されなかったため防衛省は応じなかった。玉城知事は21年11月、工事が与えるジュゴンへの影響に関して「適切に情報収集がされていない」など環境保全上の問題点を挙げ、新基地建設事業の設計変更申請を不承認とした。しかし、関連訴訟ではいずれも県の主張は認められていない。

 向井さんは「防衛省の調査が不十分な可能性はある」と指摘した上で、今回のふんの主について「全く別のジュゴンが移入するのは考えにくい」と話す。

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