戦後80年、冷戦後からポスト冷戦後へ(下)

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20世紀の教訓と戦後80年

20世紀は二度の世界大戦とロシア革命を端緒とするイデオロギー対立によって特徴づけられる。また、20世紀後半には植民地の大半が独立を遂げ、主権国家となった。国家や民族、イデオロギー体制といった単位がそこでの主体であり、その下で個々人の人権は時に抑圧され、やむを得ない犠牲だと片づけられることも少なくなかった。

80年前の沖縄戦では、国防の名の下に県民の4人に一人が犠牲となった。安全保障とは果たして、何から誰を守ることなのか。有事の可能性も語られる昨今にあって、それが沖縄戦の突き付ける今日的な課題であり、「人権の世紀」という今日的な潮流とも符合する問いである。

 中国に対抗し、抑止力を強化するという当面の対応策は、その負荷が沖縄に集中しやすい構図を持っている。いわゆる日本本土で主流の論調に安易に同調すると、沖縄はそのツケを払わされる「都合のよい存在」になりかねない。当面の国際情勢や日本外交の舵取りも中長期的には変化しうることを念頭におき、その一方で沖縄が発する問いは、世界史の今日的な潮流に沿ったものであることを深く意識しておきたい新年である。

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