沖縄文化のメジャー化と消費する本土
巻末の著者略歴をみると、9人中6人が沖縄県外出身で、在住もしくは在住経験者だったりする。版元が東京の出版社であることと共に、興味深い。沖縄サブカルが移住者にも受けて、本土向けに「輸出」された結果、東京で刊行されたのが『沖縄大衆食堂』や同様のいくつかの本というわけだ。ともあれ、「沖縄のおかしみを食う」という帯の言葉が、想定読者(=県外の沖縄フリーク)を物語っている。
2001年という刊行年からも、この本の立ち位置がみえる。刊行3年前の98年度、県外から沖縄への観光客数は400万人を超え、2年後の03年度には500万人を突破した(沖縄県ホームページによる。ちなみに昨年度は877万人!)。そういえば、NHKの朝ドラ「ちゅらさん」がブームになったのも、この年だった。
95年の米兵少女暴行事件から普天間返還合意以降は、00年の九州・沖縄サミットと2000円札発行をピークに、今と比べて相対的には、政府側の沖縄へ同情的な雰囲気が目立った時期ともいえる。その流れと軌を一にして、沖縄への観光客急増と沖縄文化の本土での「メジャー化」が進み、本書のような本も出た。
ところが、沖縄の大衆文化が、こうして本土向けに消費されることを、元のブームを作った新城さんは、繰り返し嘆いている。以前、私の取材には「何かが違う。基地問題や本土との関係が全く変わらないのに、それを見なくてもポップカルチャーを享受できてしまうことに違和感がある」と話していた。
バター載せご飯と大皿に盛ったすき焼きのホットソースがけ
沖縄の文化を本土が消費する構造については、専門に研究している人がいるので、私の雑文より、そうした方々にお任せしたほうがいい。
ただ、『沖縄大衆食堂』が紹介していた店は、いくつもが今はない。閉店した中には、戦後まもなく米軍向けにできたレストランといった老舗まで含まれていて、ざんねん。
代わりに、特にこの何年か、本土資本のチェーン店が、沖縄でもめっきり増えた。全国どこに行っても同じ現象は進んでいると感じるし、それを嘆いてみせる立場にはないのだけども。
とにもかくにも、今も、『沖縄タイムス』のサイト連載「今日もがっつり!運転手メシ」(http://press.okinawatimes.co.jp/digital/category/%e9%81%8b%e8%bb%a2%e6%89%8b%e3%83%a1%e3%82%b7/)や観光サイト「DEE okinawa」(https://www.dee-okinawa.com/)、サブカル系サイト「デイリーポータルz」(http://portal.nifty.com/)には、「沖縄らしい」メニューが山盛りに載っている。
最近は、「今日も~」の、ご飯にバターを乗せつつ大皿に盛られた「すき焼き」にホットソースをかけて、何も違和感を持っていなさそうな記事に、何かがまだまだ健在!という気にさせられた。「デイリー~」では、他のあらゆるネタと沖縄の食が同列に扱われていて、それはそれで「時代が変わった」と感じる。たぶん、この二つあたりを両極にして、沖縄とサブカルの関係の今があるのではなかろうか。