沖縄で相次ぐ「米軍機事故」の責任を問う―事態局限に資する―【上】

この記事の執筆者

<沖縄で米軍機の事故やトラブルが頻発している。2018年18日に読谷村で米軍普天間飛行場所属のAH1攻撃ヘリが緊急着陸したトラブルを含めると、米軍機の事故やトラブルは昨年9月以来、5カ月連続で計7回という異常事態に。米軍はその都度、地元の反対を押し切る形で飛行再開を繰り返し、住民の不満は高まる一方だ。問題の背景には何があるのか。元防衛研究所戦史部長の林吉永さんに、軍事の専門家の立場から寄稿していただきました>

 

異文化が障害となる理解の共有

 

日・米間に文化の相違があるように、陸・海・空、そして海兵隊といった軍種にも個性が際立つ文化がある。

陸軍とその軍人の性格は「用意周到動脈硬化」と揶揄される。陸上作戦は、地形地物の複雑さに対応して戦闘様相が多様な上、戦闘下では通信を封鎖するから詳細な戦闘計画を作成して命令を徹底する。従って、突然、計画外の状況変化が発生すると行動を硬直化させてしまう傾向がある。

 

部隊行事の接遇計画に、「来賓の乗用車が玄関口に到着すると『△印』に立っている隊員がドアを開ける」とある。隊員が待機する立ち位置、足元には「△」のテープが貼られている。極端に言うが、「△印」に立つ隊員の定位置に乗用車のドアが来るように止まらないと、隊員は、「△印」の位置で不動の姿勢のままでいるから命令変更の指示が無ければドアが開かない。

 

空軍の基本は航空機だから、二点間を最短距離・最短時間で移動するところに個性が生まれる。出発地/到着地の間、雷雲が発生していたら回避するのだが、いちいち命令を聞いている時間的余裕は無く、パイロットは勝手に雷雲を避けて飛行を続ける。従って、ドアを開ける役割を与えられた航空自衛隊の隊員は、「△印」に止まらないと予測したら先行的に立ち位置を「勝手に変える」行動をとるのである。これを「勇猛果敢支離滅裂」と言う。

 

海軍は潜水艦など艦艇のイメージが性格を言い当てる材料である。艦内は狭く、肘を張った敬礼ができないから、肘を体側につける様に敬礼する。艦の外に出て肘を張って敬礼できる空間があっても「艦内と同じ習性」が身についている。これを「伝統墨守唯我独尊」と言う。

 

頻発する在沖縄米軍、特に海兵隊の「墜落・不時着・予防着陸・部品の落下」などこの種事案に関係する発言、姿勢には、沖縄県民の理解と距離のある、「いわゆる『米国の軍事に対する感覚』、換言すれば、『米軍の文化』を象徴する性格」があって「誤解」を生むことがある。同じように沖縄の人々にも独特の個性や文化があるから理解の妨げが生ずることもある。

この記事の執筆者