沖縄で相次ぐ「米軍機事故」の責任を問う―事態局限に資する―【下】

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<沖縄で米軍機の事故やトラブルが頻発している。2018年18日に読谷村で米軍普天間飛行場所属のAH1攻撃ヘリが緊急着陸したトラブルを含めると、米軍機の事故やトラブルは昨年9月以来、5カ月連続で計7回という異常事態に。米軍はその都度、地元の反対を押し切る形で飛行再開を繰り返し、住民の不満は高まる一方だ。問題の背景には何があるのか。元防衛研究所戦史部長の林吉永さんに、軍事の専門家の立場から寄稿していただきました>

 

「ストロンチウム90」の放射線障害を暗示

 

沖縄県民は、在沖縄米軍、別けても海兵隊に対して、「まともな対応を示していない」、「安全措置について明らかにされないのは、事故原因を真面目に追及、善処していないからだ」と考えるようになっている。また、日本政府の発言が「安全の確保を申し入れた」の繰り返しで、具体性が無いから、「事故が繰り返されている」のであって、米側への同調としか見て取れない態度に腹立たしさが募っている。

 

在沖縄米軍側の事後措置は、信頼を損ない、怒りを助長している。日本側が「同型機の飛行停止や自粛要求」を行っているにもかかわらず、事故原因や事故防止対策の公表も無く、1週間程度で米側が飛行再開を繰り返しているのである。

 

昨年末、2017年12月7日、「CH53型ヘリコプターの回転翼作動異常感知装置IBIS “In-Flight Blade Inspection System”(ストロンチウム90が含まれるため取り扱いにゴーグルと皮手袋の着用が手順指令書に記載されている)のプラスティック製カバーを保育園施設の屋根に落とした」事案があった。

 

米誌『ニューズウィーク(12月7日電子版)』は、「放射性物質ストロンチウムを保護する透明キャップに酷似している」と記しているが、日本の報道では、米軍関係者の「あり得ない。飛行中に落下したとは考えられない。誰かが作為的に保育園内の建物の屋根に落とした可能性がある」といった「でっち上げ」の見方を伝えているのだが、未だ真相は分からずうやむやである。

 

沖縄米海兵隊は部品の落下を認めていないが、テレビ各局は保育園近くに住む主婦が事故発生時、「ドォーンという凄い音がして」と語る映像と、紐がちぎれた屋根上の落下物を放映した。保育園のトタン屋根に落下したIBISの仕様書をインターネット上で検索すると、”Radiation Hazard Awareness and Permit Requirements Training” と、部品本体構成品の一部が放射性同位体である「ストロンチウム90」の放射線障害を暗示している。

 

遡る2017年10月11日には、沖縄県東村で墜落炎上したCH53型ヘリコプターを防護服の米兵が処理していたことが目撃されており、報道に「ヘリの回転翼の安全装置に、放射性物質のストロンチウム90が使われている可能性があり、県環境部の職員は放射線量を測定しようとしたが、規制線の内側に立ち入れなかった」(『沖縄タイムス』10月12日)とある。

 

先の仕様書によれば、ストロンチウム90については、”Understand IBIS radiation”、“Know how to prevent exposure to radiation from the IBIS” と危険性を示唆する警告が出されており、”IBIS Safety and Permit Requirements” の項には、IBIS本体が全周に放射線を出し、飛行していない場合は正しく脱落防止の紐が付いたカバーで保護されていること、触れる場合には革製手袋、目には防護眼鏡を着用の指令、本体が変色している場合の特別な注意喚起も示している。

 

このような事態への対応に米側も日本側も「行政的対応に終始」して、住民感情への忖度が微塵も見られない。ストロンチウム90の放射性に関わる言及が無い。フクシマの原発汚染と比べれば無視できるものだったのだろうか。それでは、防護服に身を包んだ米軍の事故処理の映像は何を意味していたのだろうか。

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