「老朽化」の指摘は的を射ず
しかし、2017年12月13日、米海兵隊のCH53型ヘリコプターが小学校校庭に窓枠を落とした。
航空機部品は、飛行に支障が発生しないよう機体の部位に応じ、エンジン部の高熱にさらされるタービンブレードの消耗時間、離着陸の回数頻度によって生ずる車輪のタイヤの摩耗、翼の取り付け部位の振動やしなりで生ずる劣化、回転翼ローター部の高速回転による摩耗や弛緩、油圧パイプの劣化、等々、長時間の試験運用や実運用から得られた整備基準である回数・時間間隔ごとに、整備区分に従った各種整備・修理及び部品の更新が行われる。従って、航空機事故の原因として「老朽化」は的を射た評論ではない。
このような整備体系下、窓枠が外れたのは、「窓枠のパッキングが古くなっていた」からではない。整備上、外れる状態まで放置することがないからだ。ロック部分にトラブルがあったのであれば、点検を怠っていたとしか考えられない。あるいは、うっかりと何かが引っ掛かってロックが外れたのかもしれない。いずれにせよ、飛行前の点検に怠りが無かったのであれば、落下事故は起きていなかった。
また、型式が古い機体はトラブル発生が多いという思い違いがある。CH53型ヘリコプターは、米海兵隊が1966年に導入したものだが、点検・整備・補給体系の下で、航空機構成部品の交換は適正かつ常続しているから、「老朽化」が事故に直接結びつくという考えで事案頻発という追及は的を射ていない。もしそうであるならば、米軍よりはるかに機種更新の間隔が長期にわたる日本の場合、事故の頻発があってもおかしくない。
それは、一部で報道された、「米当局も認めた機体の劣化(2018年1月9日『日刊ゲンダイ』)で言っている、「海域に囲まれた沖縄の塩害や強風などが、米軍機の腐食を加速させている」から「機体保護を目的とした米本国の基地などとの航空機の交換(ローテーション)計画」が行われることになったことが、「昨年から頻発する米軍機による事故の背景」であって、事故の要因として、「沖縄の過酷な環境に機体を置いておくだけで、米軍機は自然とオンボロになると米軍も認めた」とあるが、正確な知見に基づく正しい報道ではない。
塩害による「老朽化や腐食」が加速され「沖縄で発生している事案」に結びつくのであれば島国日本の航空機は常に事故発生の高い蓋然性に直面していることになる。塩害対策は既に講じられている。そのために機体を洗浄する「水」の特別予算さえ取得されているのである。
このように、整備という視点では飛行中のトラブル発生を100%防止しなければならないし、整備に従事する隊員はパイロット以上に緊張感をもって任務を遂行できるよう教育訓練を受けている。しかし、先に触れたが「時代精神」や「文化」は、現行の仕組みに疑問を挟まない「個性」を作り上げてしまう。こういった空気を読み取って完璧を期す管理を行う責任を負うのが指揮官である。ここにも「人的過誤」と「文化」が事故要因となることがうかがえるのである。