「閉塞感」という既視感 

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「絶好調」経済で漂う「閉塞感」

 

沖縄経済は今、「絶好調」だという。

海邦総研主任研究員の島田尚徳さんは、昨年末にオキロンに執筆した『沖縄ビジネス展望~「好調経済」の内実を問う①~』でこう表現している。

 

人口増や海外、県外からの観光客需要の活発さなどを背景に、沖縄地域の景気はかつてないほど好調だ。「バブル期なみ、もしかしたらバブルの時を超えている」と話す経営者も出てきた。(https://okiron.net/politics/287/)                

 

こうした中で、米軍再編交付金や沖縄振興予算を多めに受け取れば払拭される程度の「閉塞感」なら、もともと県民の間に「閉塞感」なんてなかったことになるのではないか。

「辺野古」を認めることは、沖縄を日米同盟の「潤滑油」として米国に貢いだり、沖縄を軍事の砦にして隣国との緊張を高めたり、沖縄の過重な基地負担を後世に残すことと実質的に同義だから譲れないのだろう。

 

ただ、有権者がこうした「政治的」な意思をストレートに投票行動につなげるのは「特殊な環境下」に限定されるのかもしれない。名護市の有権者の判断に関しては、沖縄国際大学准教授の野添文彬さんがオキロンに寄稿した「名護市長選挙の20年」でこう記している。

 

稲嶺進氏の二度の勝利も特殊な環境下で実現したものだった。

2010年の名護市長選挙は、前年2009年に「最低でも県外」への普天間飛行場の移設を唱える民主党の鳩山由紀夫政権が発足し、沖縄で期待が高まる中で行われた。こうした中、明確に基地移設反対を唱える稲嶺氏は、2006年にV字型滑走路の代替施設受け入れを容認した島袋氏に勝利する。2014年の選挙は、前年2013年末に仲井真弘多沖縄県知事が、辺野古移設のための埋め立てを承認した直後に行われた。仲井真知事は、普天間県外移設を公約にして当選したにもかかわらず、埋め立てを承認し、しかもその際、振興予算を獲得したことについて「よい正月が迎えられる」などと発言した。仲井真知事への怒りが沖縄県全体に怒りが高まる中で、稲嶺氏は勝利したのである。しかし今回の名護市長選挙では、稲嶺氏に対し、特別な「追い風」は吹かなかった。(https://okiron.net/politics/459/3/)

 

名護市民はどう感じているのだろうか。

TBSキャスターの松原耕二さんが名護市長選の取材中に拾った声を集めたオキロン記事「名護市長選挙、それぞれの言葉【下】」で、名護市出身で、渡具知候補の選対本部青年部長をつとめる嘉陽宗一郎さんから以下の言葉を導きだしている。

 

どうして渡具知候補を応援しているの?

「ぼくが15歳のときから今の市政が担っていて、なかなかこう8年間、名護は代わり映えしない。宜野湾市(近く)の琉球大学に行ってるんですけど、宜野湾市のほうは街がどんどん変わっているのを感じてきた。ですからこの状況にちょっとでも風穴を開けられたらいいなという思いです」

どう代わり映えしないんだろう?

  「街並みも変わらないし、こうなんて言うか、街全体として元気がないというか。これは市民感覚になりますけど、閉塞感があるというか」(https://okiron.net/politics/473/3/)

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