労働生産性が低い県内企業
「働き方改革」においては、一般的に社員の「働きやすさ」の改善に焦点が当たりがちだが、県内においてはそれ以外にも忘れてはいけない視点が存在する。それは「生産性向上」だ。
沖縄地域の労働生産性を、少し古いデータではあるが、経済センサス活動調査を利用して算出してみると、県内の主要産業である観光関連産業と関連のある「宿泊業、飲食サービス業」では152万円だ。そのほかの産業においても、「電気・ガス・熱供給・水道業」を除いたすべての産業において全国平均を下回っている。特に、「金融業・保険業」、「学術研究、専門・技術サービス業」では400万円以上の差がある(図表2参照)。
この生産性の低さが、賃金にも反映していると推察される。同じ経済センサス活動調査において社員1人あたりの給与を算出すると、労働生産性と同様、ほとんどの産業において全国平均を下回っている。生産性を向上させなければ社員への還元も難しいのだ。「働き方改革」を実現させていくためにも、付加価値の高い商品・サービスを創り出していく必要がある。
従来まで県内企業は、「高離職率」「高非正規社員率」「低い労働生産性」「給与額の低さ」という各種課題をさほど気にせずとも、多くの労働力人口に恵まれていたため、離職した社員の替わりの人材を集めるのに苦労しなかった面は否定できないであろう。しかし、沖縄でも今後、労働力人口が減少する。
さらに、前回のレポートでも紹介したが、将来的な市場性を魅力に感じ、県外企業の県内進出が活発化している。県内企業は、進出してきた県外企業も意識しつつ、人材の採用、定着に取り組んでいかなければならないのだ。
給与も上がらない環境で、人手が足りないからといって長時間労働を社員に求めてしまうと、社員はよりよい労働条件を提示してくれる別の会社を探すようになるだろう。企業は、今いる社員に長く「働き続けてもらう」ためにも、生産性を向上させ、給与アップにも繋がるような「働き方改革」を行わなければならない。
今後、沖縄県内において優秀な人材を確保していくためには、社員が気持ちよく働ける仕組みを作り、労働時間を短縮しても収益が向上する会社を目指す必要があるのだ。生産性向上に繋がる具体的なポイントなどについては、機会があれば紹介したい。
※今回紹介した、「県内企業の「働き方改革」に関連した取組み状況」に関する調査結果の詳細は海邦総研HP(http://www.kaiho-ri.jp/page/1811.html)からご覧頂きたい。また、沖縄県内において人材を定着させていくためのヒントについては、拙稿「人手不足を乗り切るために企業がすべき2つの取り組み」(http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/107077)を参照されたい。