問われる「辺野古」の存在意義

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水陸機動団と海兵隊

 

三つ目。辺野古自体の存在意義を正面からきちんと説明できるかどうかは、沖縄に対してだけではなく、「沖縄の負担軽減」を大義名分に国が本土で進める安全保障政策の説得力にもかかわってくる。例えば、陸上自衛隊オスプレイの配備計画を受け入れた佐賀県だ。オスプレイ17機を米国から購入し、沖縄県・尖閣諸島など離島防衛専門の「水陸機動団」(長崎県佐世保市・相浦駐屯地)の移動手段として、佐賀空港(佐賀市)隣接地に駐機場としての駐屯地を造り、配備する計画だ。安倍政権は14年の沖縄県知事選前に、辺野古埋め立てを承認した仲井真氏を支援すべく、「沖縄の負担軽減策」として佐賀県に対し、陸自オスプレイと共に普天間所属の米海兵隊オスプレイの暫定受け入れを要請した。しかし米側が難色を示したため、訓練移転にトーンダウン。辺野古反対の翁長氏が当選し、対立が決定的となると、普天間オスプレイについては要請自体をいったん取り下げた。

一方の佐賀県内では、オスプレイ協力要請を機に沖縄への関心が高まる中、16年末に名護市沖でオスプレイ不時着・大破事故が発生。配備予定地の周辺住民を中心に反対の意見が強まり、今年2月の陸自ヘリが民家に墜落する事故も影響して膠着状態に。佐賀県の山口祥義知事が8月に受け入れを正式表明したが、地権者との交渉が残されている。既に計画は当初予定より大幅に遅れ防衛省は米国からのオスプレイ納入を当面延期した上、米軍の空港利用を巡っては佐賀市など地元の反発がより強く、かえってハードルが高くなった。

安倍政権が当初、佐賀を普天間の受け入れ先にと考えた背景には、普天間の県外移設先として佐賀がたびたび浮上してきた過去の経緯がある。普天間返還の日米合意当時に沖縄県副知事だった吉元政矩氏はこう語る。

「海兵隊を運ぶ強襲揚陸艦は佐世保港が母港で、佐賀空港には陸上自衛隊オスプレイ17機の配備が計画されている。そこまでやるなら、普天間のオスプレイも佐賀空港に移せばいい。佐賀県が負担が重すぎると言うのであれば、政府がもっと海兵隊を減らすよう米側に求めればいい。辺野古に新しい基地を造る必要は全くない」

さらには、自衛隊と防衛予算の効率的運用の観点から、佐賀に陸自駐屯地を造る必要性に疑問を呈する専門家もいる。自衛隊史に詳しい中京大の佐道明広中京大教授は、毎日新聞9月12日朝刊の「論点 日本防衛のあり方」でこう提案した。

「一案だが、(「日本版海兵隊」といわれる)水陸機動団は沖縄に配備した方が『尖閣は日本が守る』と示せるのではないか。相浦には沖縄の米海兵隊を移す。もともと米海兵隊の移動手段である強襲揚陸艦は佐世保が母港だ。そうすればオスプレイも、米海兵隊の拠点として沖縄県内に計画中の普天間代替施設も、要らなくなるかもしれない」

安倍政権に提案したい。国民が国の安全保障を自らの問題として担う覚悟を持つためにも、「辺野古」を「沖縄の負担軽減策」としてではなく、将来の安全保障環境まで見通し、全国の自衛隊と在日米軍基地の全体像の中に位置付けて説明してはどうだろうか。

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