医者が半分、ユタも半分

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社員名簿持参の相談も

 

Kさん(女性、60歳)に指定された面談場所は、沖縄本島中部の住宅街の一角。沖縄で一般的なコンクリート住宅だった。

「これ以上、忙しくなりたくない」との理由で、名前などは明かさないよう求められた。

 「私はユタではありません。神の世界の近くにいるから、カミンチュと呼ばれています」

  Kさんはそう言って、畳敷きの居間でざっくばらんに取材に応じてくれた。壁際の床の間には、Kさんが「私の一番の守護神」という中国の関帝王の掛け軸や香炉などが置かれている。即席で可能な方法で運勢を見てもらうことにした。

  記者の名前と住所、干支、家族構成を記入した紙札に両手をかざしながら、「特別困っていることとかないですか」と問うKさん。返答によどむと、先刻承知と言わんばかりに「ないですね」と断言された。仕事運が気になると告げると、Kさんは事もなげにこう即答した。

 「来年からは上がってきますよ。新しいことをやるのであれば来年がいいですね」

  四半世紀に及ぶ記者生活に光明が差す日はやってくるのか……。複雑な思いもよぎるが、心が軽やかになったのは事実だ。

  那覇市内で不動産業の傍らユタの仕事をこなす人もいる。人の良さがにじむ朗らかな表情を浮かべる新崎美由紀さん(42)にも、権威ぶった様子はまったく感じられなかった。

  ビジネス関係の相談はほぼ男性に限られ、県外から来る人のほうが多いという。中には、社員名簿片手に人事やリストラの相談に来る経営者も。

  沖縄でも核家族が増え、拝みの意味を知らない人が目立つようになった。新崎さんは「数え切れないほどある」拝所を訪ねるたび写真に収め、グーグルマップにマークしている。地図上で「沖縄拝所」が一覧できるサービスをネット公開するためだ。新崎さんは「『神の文化』を次世代につなげたい」と意気込む。

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