分断乗り越える処方箋~「新しい提案」書評

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「普天間・辺野古」の問題が、これほど長期にわたって深刻な政治・社会的ダメージを及ぼすと予測した政治家や官僚は日米にいただろうか。

沖縄の保守県政は米軍普天間飛行場の「県内移設」を許容する民意の醸成が極めて困難であることを当初から認識し、代替施設の使用期限を15年とするなど条件付きで政府との妥協点を探る努力を試みた。しかしこうした県側の「苦渋の選択」も、政府は2006年の在日米軍再編合意に伴って明確に排除。政府は「どんな手を使ってでも地元の合意を得る」スタンスから、「地元の合意が得られなくても工事を進める」という民主主義の手続き上、極めて不穏当な錯誤状態に移行したのである。

「固定的少数者」である沖縄の民意

 

「民意を顧みない」という、この致命的な政治判断を歴代政権が踏襲することにより、県と政府の軋轢は必然的に増し、結果的に沖縄県民とそれ以外の国民、政府、米軍のいずれもが不利益を被る事態を招いている。

なぜこれほど明白な不条理を解消できないのか。本書の問題意識はこの点にある。

主著者の那覇市在住の司法書士、安里長従はこう説明する。

「この『新しい提案』は、特定の結論を求める『理論』ではなく、公正で民主的な解決の道筋を具体的に示そうという点で『アイデア』であり、『アプローチ』です」

本書は、日米のはざまで常に少数者の立場に置かれる「固定的少数者」である沖縄の民意を、いかにして政治の回路に乗せられるかという「戦術」を提案している。

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