分断乗り越える処方箋~「新しい提案」書評

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「辺野古が唯一」をいかに「解除」するか

 

大事なのは、「結論の押し付け」ではないという点である。「辺野古が唯一」ではないように、絶対的に正しい結論などない。本書が求めるのは、それぞれの「政治的なこだわり」はいったん脇に置き、「公正で民主的なプロセス」を経ることである。だからこそ、政治的な主義主張を超えて互いに歩み寄る素地があるのだ。

本書は「本土でもできること」の手引きとして地方議会への陳情書や意見書案の参考例も掲載している。東京都の小金井市議会が昨年12月に可決した、普天間飛行場の移設問題について全国で議論することなどを求める意見書の元になったのも本書である。格差社会が定着し、地域や職場で分断が進む中、この国の人々は「民主主義」や「憲法」を媒介につながることができるのか。本書は基地問題の枠を超え、日本社会の内実を問う側面もある。

本書の発刊は、知事の埋め立て承認撤回と県民投票をめぐって「オール沖縄」内部がぎくしゃくした時期と重なる。いわば、逆境の中で培われた「知恵の結晶」でもある。

日米の政策決定に携わる政治家や官僚が目まぐるしく変わる中、沖縄県民は20年余にわたって「普天間・辺野古」という政治課題に常に当事者として向き合ってきた。県民にとって切実なのは、基地問題をめぐって分断される理不尽の解消だ。その根本原因に目を向けようとする動きは、世代やイデオロギーを超えて深化している。

本書はその処方箋としても有効なヒントを提示しているのではないか。

【本稿は113日付『琉球新報』掲載記事を加筆しました】

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