公正で民主的な手続きによる解決
声を上げ続けなければ、「固定的少数者」である沖縄の民意は圧殺される。そんな沖縄から見れば、本土は「民意を圧殺する側」のように映る。だが、政府の「辺野古」の進め方がおかしいと感じている人は本土でも決して少数ではない。安里は本土の沖縄に対する「構造的差別」をベースに論じながらも、どうすれば分断を乗り越えられるのかに主眼を置く。そのためのツールが「民主主義」である。安里はこう唱える。
「多くの本土の人が、質問されれば『沖縄の負担軽減』を『受動的』に『漠然』とは考えるけれど、政府の辺野古新基地建設の強行に対し、『主体的』に反対の意思表明を行うことや、『具体的』な行動を起こせないでいるとするならば(これこそが『構造的差別』といわれる所以ですが)、イデオロギーにかかわらず、沖縄側から、公正で民主的な手続きとして、『主体的』かつ『具体的』に合意できるプロセスをきちんと示し、この問題の解決方法を積極的に訴えていくしかありません」
その前提として、普天間飛行場の県外移設が実現しないのは軍事的理由ではなく、「本土の理解が得られないから」という政治的理由である点を共有し、移設先は「辺野古が唯一」という政府の論理を瓦解させることが必要だと唱える。その上で、「当事者意識を持った国民的議論」を経て代替施設が必要との結論に至るのであれば、沖縄以外のすべての自治体を等しく潜在的な候補地として、民主主義及び憲法の精神に則り、一地域への一方的な押しつけとならないよう、公正で民主的な手続きにより解決する―というのが本書の提示するプロセスだ。