代執行へ国が提訴 政治力なき政府の「解決策」

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米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり、国が沖縄県知事に代わって設計変更を承認する「代執行」に向けた訴訟が10月30日に始まる。


国家権力が総がかりで沖縄をねじ伏せにかかっている。名護市辺野古の新基地建設をめぐる国と県の係争の「最終局面」はそんな印象を強くするものだった。

軟弱地盤を含む大浦湾側の埋め立て工事に必要な防衛省の設計変更申請について、斉藤鉄夫国土交通相は10月5日、国が県に代わって承認する「代執行」のための訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。

これに対し、玉城デニー知事は10月11日、「承認するという立場には立てない」と記者団に明言。名護市辺野古の新基地建設に伴う軟弱地盤改良工事をめぐる沖縄防衛局の設計変更申請を承認せず、国が起こした代執行訴訟で自ら意見陳述し、「県民の公益」を主張する考えも示した。

ただ、年内にも判決が出る可能性がある代執行訴訟での県の敗訴は濃厚とみられる。

設計変更の不承認処分をめぐる9月4日の最高裁判決で県の敗訴が確定して以降、玉城知事の苦悩の表情が何度もマスコミを通じて映し出された。その都度、この表情には既視感がある、と思っていた。最も近いと感じたのが、1990~98年に知事を務めた大田昌秀氏だ。

 大田氏が知事在任中の95年9月、米海兵隊員らによる少女暴行事件が起きた。翌10月の県民総決起大会で壇上の大田知事が最初に口にしたのは被害者の少女に対する謝罪だった。

「行政の責任者として、いちばん大事な幼い子どもの人間としての尊厳を守ることができなかったことを心の底からお詫び申し上げます」

大田知事はその後、米軍用地の代理署名拒否に踏み切る。代理署名とは、米軍用地への提供を拒む地主に代わって知事が署名を行い、民有地の強制使用を可能にする手続きだ。

これにも沖縄県特有の背景がある。在日米軍基地の大半が戦前の旧日本軍の基地をそのまま使用しているのに対し、沖縄県では戦後、米軍による公・民有地の強制接収が行われた。このため、沖縄県を除く全国の米軍施設・区域では約87%が国有地なのに対し、沖縄県では民有地が4割近くを占める。知事が代理署名を拒否すれば、米軍用地の使用は違法状態となり、日米安保体制が根幹から揺らぐ事態に陥るため日本社会の耳目が沖縄に集中した。

そんな中、日米両政府が合意したのが96年の普天間飛行場の返還だった。市街地の真ん中にある同飛行場の返還は大田知事が最優先で求めていたからだ。この返還合意はのちに「県内移設」が前提であることが分かり、現在に至る混沌の出発点になる。

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