代執行へ国が提訴 政治力なき政府の「解決策」

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96年8月、最高裁は代理署名拒否訴訟の上告審で沖縄県の訴えを棄却、県の全面敗訴となった。

沖縄では最高裁判決の直後の96年9月8日に、「基地の整理・縮小」と「日米地位協定の見直し」について賛否を問う県民投票が行われ、賛成は約9割にのぼった。県民投票の翌々日、大田知事は橋本龍太郎首相(当時)と面談。県民投票の結果を伝え、基地問題解決や沖縄振興を訴えた。これを受け、橋本首相は基地の整理縮小と日米地位協定の運用見直し、沖縄の経済振興に尽力するとの談話を閣議決定した。

会談から3日後、大田知事は橋本首相の談話を評価する形で、代理署名手続きである公告・縦覧代行に応じることを表明する。

この時の会見に臨む大田知事の姿が、まさに今の玉城知事と重なるのだ。国の意向に従うにせよ、あらがうにせよ、県民の民意と国家権力の板挟みになる沖縄県知事の苦悩の姿だ。

今回の玉城知事の判断に際し、琉球大学の我部政明・名誉教授(国際政治)は「沖縄の知事には宿命づけられた任務がある」と歴代の沖縄県知事と連なる点を指摘している。「米軍基地を巡る政治と行政の間での緊張関係の中で、知事には将来の沖縄を形作る決定が問われる。どの知事にも決定が問われる時が必ずやってきた」(10月5日付沖縄タイムス)と。

沖縄の知事と他の都道府県知事との違いは、日本の「安全」を支える米軍基地の大半(米軍専用施設面積の各都道府県に占める割合は、沖縄県が8.10%なのに対し、次に割合の高い神奈川県で0..61%と大きな開きがある)を抱えさせられていること。そして、それに伴う負担を強いられる住民と政府の間に立たねばならないことである。我部氏は「沖縄の知事は、日本の安全保障政策に対し、沖縄の利益表出と行政組織である沖縄県の執行の二つの役割を担う」と説き、こう続ける。

「その二つが両立できない時、政権との距離に関係なく過去の知事たちは自らの考えに沿い判断してきたようだ。そして、行政の立場を選んだ。理由に、法律上の知事の権限が及ばないことを挙げてきた。知事の政治的役割も検討したが、決定後の世界を政治的に見通せなかったと推測する」

代理署名をめぐる大田知事の応諾表明はまさにそうだろう。

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