民意と政治の乖離をどう埋めるか~「辺野古」が日本社会に問うもの

この記事の執筆者

米軍普天間飛行場の返還をめぐる問題は2018年12月、国が移設先とする名護市辺野古の沿岸部への土砂投入に着手。沖縄県の玉城デニー知事が求める「対話」を踏みにじり工事が進む。米ホワイトハウスの請願サイト署名で国際的注目も集まる中、どうすれば民意と離れた政治に歯止めをかけられるのか。

 

明るさや元気の「見える化」

 

辺野古の海に初めて土砂が投入された昨年1214日の夕暮れどき。グラスボートに乗り込んだ若者たちが笑顔を弾けさせながら、約50個のカラフルな風船を海上にたなびかせた。緊迫の海域で「アトラクション」と見まがう大胆なパフォーマンスを敢行したのは、18年9月の沖縄県知事選で玉城デニー知事を支援した若者たちだ。

「愛の埋立してきました!

「暴力の埋立に負けない」

フェイスブックに風船パフォーマンスの動画とともに、こんなメッセージを投稿したのは那覇市の徳森りまさん(31)だ。

埋め立て海域に近づくと、抗議市民を監視する警戒船が近寄ってきた。このとき、徳森さんたちが風船を持ちながら手を振ると、警戒船の乗員が手を振り返した。

「一瞬の出来事でしたが、とても心に響きました。いつもは威圧的なのに、やり方を変えたら相手の反応も変わってくるんだなあって」

翌日、抗議行動を続ける市民を激励するため玉城知事が米軍キャンプ・シュワブのゲート前を訪れた。出迎えた多くの市民は、沖縄の本土復帰運動のころから労組の集会などで歌い継がれている「沖縄を返せ」を合唱した。

「いつものパターンになってしまう」。そう感じた徳森さんは約20人の若者で玉城知事を囲み、「政府のやり方に負けず明るくやっていきましょう」と呼び掛け、知事選で玉城支持のシンボルとなった小指と人差し指を立てる「デニってる」のポーズを宙に掲げた。笑顔の写真が全国紙を飾った。

「イメージって大事。笑顔は強さだし、みんなが求めている。怒ってこぶしを突き上げるばかりではなく、明るさをもっと『見える化』していけば運動のイメージも変わるはず」

徳森さんは、玉城氏の知事選でライバル候補を貶めるネガティブキャンペーンではなく、玉城候補の明るい人柄や政策をわかりやすくSNSなどで積極発信する「ポジティブキャンペーン」を提唱した若者チームの一人だ。背景にはこんな思いがあった。

「ウチナーンチュ(沖縄の人)は笑顔や元気の才能がある。悲しみや怒りを先に持ってくるのではなく、仲間を増やす方向にエネルギーを使ったほうがいい」

知事選で玉城知事は過去最高得票で当選した。この成功体験は知事選にかかわった若者たちに大きな自信を残した。徳森さんは言う。

「マイノリティーのつらさを知る沖縄だからこそ、分断や悔しい気持ちを乗り越えて勝つためにポジキャンができるんです」

この記事の執筆者