政治は責任をとらなくてはならない
-安倍政権にとっても予想外の結果だったでしょうね。
山崎 自民党の選挙のプロからすれば、負けるどころかあれだけ大差がつくというのは、想像を絶することだったと思います。それにもかかわらず、その弁明も反省の弁もありません。菅官房長官も二階幹事長も、他の者も誰もいわない。これでは沖縄を黙殺したも同然です。
菅長官は、名護の市長選挙で勝ったときには「これが民意だ。選挙がすべてだ」と言った。ところが知事選で大敗すると今度は黙殺。自分の言ったことには、責任をとらなくてはいけません。しかも陣頭指揮をとったのですから。今の政権は誰も責任をとりません。
今の沖縄のことは、1970年の選挙のときと完全に重なって見えるのです。内政上の大問題だし、日米関係にももろに影響するし、尖閣諸島の問題にも関係してくる。このまま放置できない大問題です。
-今後、どのような展開がありうるのでしょうか。
山崎 この問題は完全に行き詰まっている。率直にいって、どうしたらいいのかということについて、目測がきかないのです。ひとまず沖縄県民の立場に立って、沖縄としてある程度、許容できるような当面の解決-根本的解決というのは米軍基地がすべてなくなるということだから、これは遠い話しになると思いますが-、つまり、辺野古の問題をどうしたらいいのかということですが、これには現時点では明確な回答がない。あれば簡単なのですが。
政権側としては、今度は県民投票を揺さぶろうとしている。協力しない自治体を出してマダラの状態にして、全県民の意思ではないという説明をしようとしている。また、埋め立てを急いで、工事はもはや不可逆的だと印象付けようとしている。逆にいえば、それだけ県民投票の結果を恐れているわけです。
しかし、次の県知事選挙でも玉城デニー当選となれば、移設は暗礁に乗り上げるでしょうね。工事を止めざるを得なくなると思う。
今後、ありうる展開とは
-するとアメリカ側としてはどうなのでしょうか。
山崎 アメリカは、日本本土への移設を求めて来るかもしれませんね。日本側としては、辺野古でも本土でもなく、グアムに行ってくれることが望ましいかもしれないが、米軍にとって在日米軍基地というのは既得権益だから、容易には妥協しない。米政府というよりは米軍ですね。民間でいえば居住権が発生しているようなものだから、なかなか譲らないですよ、これは。
ところが、本土に受け入れるところはない。沖縄だけではなく、日本全国で米軍基地を歓迎しているところはどこにもありません。その一方で、日本政府は日米安保で基地提供義務があるし、米軍の抑止力に依存しています。ただ、国としてはそうだけど、地域としては沖縄だけでなく、どこも反対ですよ。自衛隊の基地ですら反対なのに、いわんや米軍の基地ですよ。
―大変に難しい問題ですが、その折り合いはどのようにつければいいのでしょうか。
山崎 それは国による説得しかないです。国策上の、安全保障上のことだから、協力してくれという説得しかないです。
その中にあって、沖縄県民が米軍基地の集中していることについて、納得いかないというのは当然だと思います。理解しろということ自体が無理な話です。
沖縄としては歴史的経緯によって受け入れているわけで、要するにアメリカの占領下にあったから、そのまま占領軍が残っているわけです。本土の主権回復から20年も経って復帰したわけですから。
その間に沖縄の米軍基地が既得権益として出来上がっているわけです。しかもその間、他府県では米軍基地を減らしていったけれども、沖縄では減らなかった。その意味では、日本政府は沖縄を差別したと思いますよ。米軍の要求に従ったということですから。