「辺野古見直し」を政治の回路に乗せる~玉城デニー知事インタビュー【後編】

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「米海兵隊は日本にとって抑止力なのか」

 

 問題は今後なのだ。

自由党の元衆議院議員で、旧民主党に所属した経歴も持つ玉城知事は、現野党の政治勢力とどう向き合おうとしているのか。

 「沖縄の米軍基地の7割を占める米海兵隊の駐留は、日本の抑止力とは関係がないことをはっきりと表明し、アジアの中の平和環境を構築する上で米国と良好な同盟関係を維持するというスタンスを、日本政府の『新しい勢力』は明確に打ち出せばいいと考えています」

 現政権との対抗軸となる政治勢力については、玉城知事が衆議院議員時代に行動を共にした自由党の小沢一郎代表が「野党共闘」として具現化を図ろうとしている。玉城知事が言う「新しい勢力」とは、野党共闘とそれに共感し、行動することを目的とする政治勢力を指す。

小沢氏は民主党代表だった09年に記者会見で「軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンスは第7艦隊で十分だ」と語った。この発言について玉城知事は「在日米軍の本質をつくもの」と評価する。

「あの当時、既に小沢さんは沖縄に米海兵隊の前線基地を置く必要はないという見識をしっかり持っていました」

米海兵隊はそもそも緊急展開部隊であり、日本防衛のための部隊ではない。

玉城知事は小沢氏の「第7艦隊だけで十分」との見解と、「米海兵隊は日本にとって抑止力なのか」という問題設定は通底しており、実質的に「同義」であるとの認識だ。一方で玉城知事は、米海兵隊は沖縄から「出て行ってもらう」のではなく、「移ってもらう」という姿勢で政治的アプローチを図るべきだという。

 「米海兵隊を『抑止力』の名目で沖縄に引き留めてきたのは日本政府です。これは虚構であり、まさに政治の悪用です。しかし、かといって沖縄から海兵隊に出て行ってもらおうとするときに、沖縄側が海兵隊を排除するという考え方に立つのではなく、『新しい世界平和の形を共に構築する』ための新しい在り方として提案すべきだと思います」

 米軍は政治の決定に基づいて動く組織だ。信頼と協力に基づく議論が、政治にとっても、政治によって動かされる組織(米軍)にとっても「重要な基本点」との認識が玉城知事にはある。

 「沖縄県が求めているのは現実的な、人と人による安全保障の確立です。翁長雄志前知事もおっしゃっていましたが、沖縄をアジアや世界の平和の緩衝地帯にしたいという気持ちが私にも強くあります。これは、『万国津梁』という沖縄古来の言葉にも連なる、琉球の祖先から受け継いできた価値観を相互に信頼し合える未来へつなぐ設計図でもあるでしょう」

 玉城知事のスーツの襟元には、カラフルな丸いバッジが付けられている。京都市内の障害者就労施設で手づくりされているSDGsのバッジだ。

玉城知事は、2015年の国連サミットで採択された、持続可能な世界を実現するための30年までの国際目標であるSDGsと沖縄の将来像を重ねてこう言う。

「SDGsの目標は、これからの沖縄の将来の目標と重ねていくことができると確信しています。3年後には沖縄版SDGsの方向性を明確にしたいですね」

沖縄版SDGsの策定に向け、ことし4月から全庁的な取り組みを始める計画だという。玉城知事の視線は、普遍的な民主主義の尊厳の在り方と重ねるように、沖縄の未来へと注がれている。

【本稿はアエラドット記事を転載しました】

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