「骨粗しょう症」の地盤
技術面で「辺野古」に疑問を付す意見もある。
「三十年近く、沖縄県や国道・防衛局などの公共工事の現場管理責任者を務めてきた」という一級土木施工管理技士の奥間政則は『月刊琉球』(7・8月合併号、琉球館)のインタビューで、辺野古新基地の滑走路先端部の地盤を問題視する。
「ケーソン護岸予定地の地盤は、N値(地層の硬軟を示す値)が低い沖積層と、さらにその下にはN値にばらつきがある琉球石灰岩となっているため、巨大なケーソンの基礎地盤としては適さないと考えられます」
琉球石灰岩は空洞が多く、「骨粗しょう症のような状態」なのだという。奥間によると、石灰岩の上には構造物は建てない方がいいとされていて、アメリカの州によっては、石灰岩の上に構造物を建てることを禁じている。
沖縄防衛局は17年2月~4月、大型特殊船「ポセイドン」で工事海域の地質調査を実施したが、現段階で結果を公表していない。基礎構造の設計変更が必要ではないか、と沖縄防衛局に質問したという奥間は、こう念を押す。
「設計変更が伴うことになれば、沖縄県知事の権限で止めることができます」
設計変更申請が避けられないのだとすれば、問題はその時期だろう。知事選は18年秋だ。反対派の知事がいる限り、「辺野古」は今後も一筋縄では進まない。
辺野古は日本政府の「政治判断」
日米が普天間返還に合意した1996年当時の米国防長官のウイリアム・ペリーが、『沖縄タイムス』(9月14日)のインタビューで普天間飛行場の移設先に言及している。
「在日米軍は日本に何らかの攻撃が加えられたとき、信頼関係を満たす存在であることを証明する任務がある。それを遂行するために別の場所を模索することが可能かということだが、私は必ずしも沖縄である必要はないと思っている。(移設先については)安全保障や軍事の観点ではなく、日本政府による政治的な判断が大きく関わっている」
元沖縄タイムス論説委員でND評議員の屋良朝博は『日常化された境界』(屋良・野添文彬・山本章子、北海道大学出版会)で、歴史的な差別意識が沖縄の過重な基地負担の背景にあると論難し、こう嘆く。
「いま沖縄の基地問題といえば、普天間飛行場の移設問題で、名護市辺野古での新基地建設に反対する住民を『極左』よばわりする低劣なテレビ番組に独占されている。普天間を使う海兵隊がどのような部隊で、なぜ沖縄に駐留しなければならないのかを分析したり、そもそも岐阜、山梨などから移転した部隊であることなどを解説したりするメディアはほぼ皆無である。沖縄報道は政府に楯つく『土人』の反対運動だけにスポットが当たる。冷静な分析、議論さえも忌避する言論空間ほど怖いものはない」
米軍の抑止力に対する過信と沖縄への過度な依存が、「国防」の根幹をかえって危うくしている側面はないか。(文中敬称略)
【本稿は9月30日付毎日新聞「沖縄論壇時評」を加筆修正しました】