2017年総選挙 沖縄での選挙結果から見えてくるもの

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しかし結果は、前述のように四つの小選挙区のうち三つで「オール沖縄」が勝利した。照屋寛之沖縄国際大学教授によれば、「オール沖縄」の候補者四人と自公の候補者四人の有権者数に占める得票数は、2014年総選挙で「オール沖縄」53.4%、自公40.5%だったが、今回の総選挙も「オール沖縄」51.0%、自公42.0%であった(『沖縄タイムス』2017年10月24日)。また2017年のNHKの沖縄県での世論調査によれば、約62%が辺野古移設に反対している。県内では、約65%が日米安保を支持する一方、米軍基地をめぐる沖縄の扱いについては七割の人々が「差別的だ」と感じている(河野啓「沖縄米軍基地をめぐる意識 沖縄と全国 2017年4月「復帰45年の沖縄」調査」『放送研究と調査』2017年8月号)。沖縄県民の「オール沖縄」や辺野古反対への根強い支持は、基地負担の不平等性への反発から来ているのだといえよう。

一方、四つの小選挙区のうちの一つで、「オール沖縄」が敗れたことの意味は小さくない。沖縄四区に無所属で出馬したものの敗れた前職の仲里利信氏は、かつて自民党政治家で県議会議長もつとめ、同じく自民党沖縄県連幹事長も努めた翁長知事とともに、保革を越えた「オール沖縄」を象徴する人物だった。仲里氏は80歳という高齢であったこともあり、後継者探しなどで選挙戦に出遅れた。また沖縄四区は、糸満市など米軍基地がない地域であるため、基地問題が大きな争点にならなかったという。今回の選挙は、「オール沖縄」の「強さ」とともに、若い世代の人材や争点についての「弱さ」も示したのである。

自民党の勝利、立憲民主党の躍進と沖縄

これまで安倍政権は、「沖縄の基地負担の軽減」「沖縄に寄り添って」という言葉を掲げながら、沖縄県知事選挙や国政選挙の結果を無視・排除して辺野古移設工事を進めてきた。今回の選挙公約でも自民党は、「普天間飛行場の辺野古移設や在日米軍再編を着実に進める」としていた。一方、「強く自立した沖縄」を国家戦略」と位置付け、沖縄振興に取り組むことを明記した点が特徴的だ。しかし選挙では、安倍政権の沖縄政策への地元の厳しい評価が示された。

こうした沖縄での選挙結果にもかかわらず、全国レベルでの勝利を背景に、安倍政権は従来の政策を継続することが予想される。しかし、すでにこれまでの安倍政権の沖縄政策は日本本土と沖縄の間に亀裂を生み出してきた。一部のメディアでは、「沖縄たたき」「嫌沖(縄)」ともいうべき言論がなされている。日本政府による高江でのヘリパッド建設では、2016年10月に大阪府警の機動隊員が、反対運動をしていた市民を「土人」と罵倒した。沖縄での世論調査でも、57%が沖縄への誹謗中傷が増えたと感じると回答し、70%が本土の人は沖縄の人を理解していないと回答している(河野前掲論文)。安倍政権が沖縄での選挙結果を無視してこのまま辺野古移設を強行すれば、日本本土と沖縄の溝を深め、国民統合の危機という本当の「国難」を招来しかねない。

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