一方、野党第一党へと躍進した立憲民主党は、公約で「辺野古移設について再検証をし、沖縄県民の理解を得られる道をゼロベースで見直す」としていた。このような政策方針が支持されてか、立憲民主党は、沖縄県内でも、小選挙区で候補者を擁立しなかったにもかかわらず、比例区で自民党(22.4%)、公明党(17.3%)に次いで三番目の得票率(15.1%)を獲得した。具体的内容はまだ不透明だが、自民党の三分の一にも満たないとはいえ、野党第一党が、沖縄政策、特に辺野古移設の見直しを掲げたことの意味は大きい。
かつて鳩山由紀夫民主党政権が普天間飛行場の「最低でも県外」の移設を公約に掲げながら、結局、辺野古移設に回帰したことは、多くの沖縄県民を裏切ることになった。しかも、沖縄県民をさらに失望させたのは、これ以降、主要政党や全国メディアが、辺野古移設見直し論議をタブー視し、地元の声に耳を閉ざしてしまったことだ。今後、立憲民主党が、民主党政権の失敗を踏まえた上で、政策を鍛え上げ、沖縄県民の民意の受け皿となるような現実的な代替案を提示していくことを期待したい。
沖縄の声をくむ政治を
安倍首相によれば、「今、わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後、最も厳しい」という(「自民党政権公約2017」)。しかし、安全保障の最前線というべき沖縄で、地元の反発が強まっているという事実は、日本の安全保障の基盤が極めて脆弱であることを示している。今回の選挙を踏まえ、日米同盟の安定や日本の安全保障のためにも、沖縄県民の望む形での「基地負担の軽減」を進め、地元の不満を和らげることが重要だ。また安倍政権が進めようとする憲法改正論議でも、日本に復帰し憲法の適用を受けてまだ45年目にしかならず、過重な基地負担という不条理を負い続ける沖縄の声を無視するべきではない。
一方、沖縄県内では、依然として基地問題は深刻だが、今後は、辺野古移設問題以外の政策課題についても幅広い議論を期待したい。世論調査によれば、沖縄県民に気になる問題について尋ねたところ、「基地問題」と答えたのは46.2%で二番目に多かったものの、一番多かったのは「所得の低さ」で53.8%だった。20代への質問では、「所得の低さ」と答えたのは60.1%だったのに対し「基地問題」と答えたのは37.6%だった(琉球新報『2016沖縄県民意識調査』)。沖縄県内でも経済状況への関心は基地問題よりも高く、この傾向は特に若者に顕著である。今後の選挙では、どの陣営も、基地問題とともに貧困や失業・労働などの問題の解決に向けた沖縄の将来像をどう提示するかが問われている。