10月22日に行われた衆議院総選挙では、自民党と公明党が議席数の三分の二以上を獲得して圧勝した。一方、沖縄の選挙戦は、全国レベルと異なる様相を呈した。宜野湾市にある米海兵隊の普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非が最大の争点になり、四つの小選挙区のうち三つで、辺野古移設に反対する「オール沖縄」と呼ばれる政治勢力の候補者が、自民党の候補者に勝利したのである。沖縄では来年2月に名護市長選、11月頃に県知事選が予定されるが、今回の総選挙はこれらの前哨戦としての位置付けもあった。
選挙戦の最中の10月12日には、沖縄県北部の東村高江で、米軍ヘリCH53Eが民間人の牧草地に不時着して炎上し、沖縄に米軍基地が集中する不条理が改めて浮き彫りになった。米軍は、日米地位協定を盾に、日本側の調査を認めなかったばかりか、18日には、安全性が確認できたとして、同機種のヘリの飛行を一方的に再開した。また米軍は、調査のためとして、事故機の残骸だけでなく事故周辺の牧草地の土まで持ち去った。
沖縄県内ではこの事件への反発は強く、16日には県議会が全会一致で抗議決議を行った。翁長雄志沖縄県知事も、この事件は「沖縄にとって国難」であり、「日本国から守られている感じがしない」と述べている。これらは、安倍首相が総選挙で「国難突破」を掲げ、政権公約で「この国を守り抜く」と強調していたことへの痛烈な批判だった。本来この事件をはじめ沖縄の基地問題は、沖縄だけではなく日米同盟のあり方にかかわる日本全体の問題だが、選挙戦で議論が深まることはなかった。
今回の選挙は、沖縄にとって何を意味するのか。本稿ではこの点を考えてみたい。
「オール沖縄」3勝1敗の背景
前回の2014年の総選挙では、同年の沖縄県知事選挙で翁長雄志知事を誕生させた勢いもあり、沖縄の四つの小選挙区すべてで「オール沖縄」の候補者が勝利した。「オール沖縄」は、2016年参議院選挙でも勝利した。
これに対し、今回の選挙は、当初からいくつかの選挙区で「オール沖縄」の苦戦が予想されていた。「オール沖縄」の中心人物である翁長知事の求心力に陰りが見えてきたとされたのである。まず、今年1月の宮古島市、2月の浦添市、4月のうるま市の市長選挙、7月の那覇市議会選挙で「オール沖縄」の候補者が敗れた。また、翁長知事の右腕だった安慶田光男副知事が教員採用試験の「口利き」などの疑惑で2月に辞任し、翁長県政に衝撃を与えた。さらに昨年12月、辺野古移設に伴う埋め立て承認取り消しをめぐる裁判での最高裁判決で沖縄県の敗訴が確定した。翁長知事は、再び7月に辺野古移設工事の差し止め訴訟を起こしている。