基地問題を考える回路を取り戻す

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日米安保条約の本質

オキロンで私が何度か述べているように、そもそも日米安保条約の本質は、「物と人との協力」にある。すなわち、日本がアメリカに基地(物)を提供し、アメリカは日本に軍隊(人)を提供する、言い換えれば日本がアメリカに基地を提供することと引き換えにアメリカに守ってもらう、というのが同条約の本質である。よってこの日米安保条約を根底に据えてものを考えると、どうしても本質的な要素である「基地」の問題から目を背けることはできないのである。

この共同宣言の発表とそこに至る一連のプロセスは、いわゆる日米安保「再定義」ないし「再確認」のプロセスとして知られているが、その最中に沖縄で「少女暴行事件」が発生し、反基地運動がうねりをあげて高まることになる。当時の沖縄県知事大田昌秀は、契約期限の切れる基地に対してその継続使用に「ノー」の意思(代理署名拒否)を示したばかりか、沖縄に負担が集中する米軍基地の整理縮小を求め、同時にアメリカにとって最も本質的な利益が記されている日米地位協定の見直しを提起するのであった。

日米安保の根幹にある重要問題

安保再定義作業にかかわった防衛庁の秋山昌廣防衛局長が、「在日米軍への基地の提供問題が、実は、日米安全保障体制の根幹にあるきわめて大きな問題であることをあらためて認識した」と述べていることは、まさに事の本質がどこにあるのかを正確に捉えていたといえよう(秋山『日米の戦略対話が始まった』187頁)。その後、沖縄の情勢に危機感をもった日米両政府が、地位協定の運用改善や基地の整理縮小に取り組んだことは、周知の通りである。

このようにたとえ「日米同盟」を謳ったにしても、その根底には「日米安保条約」があるという認識をもっていたがゆえに、必然的に「基地」問題から目を逸らすことはできず、この問題に正面から取り組まざるをえなかったのである。

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