【書評】金城馨著『沖縄人として日本人を生きる~基地引き取りで暴力を断つ』

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「多元的」な生き様

県民投票の一ヵ月後である2019年3月25日、私(安里)が責任者を務める「新しい提案」実行委員会で、「辺野古新基地建設の即時中止と、普天間基地の沖縄県外・国外移転について、国民的議論により、民主主義及び憲法に基づき公正に解決するべきとする意見書の採択をもとめる陳情」を、全国1788の市区町村及び都道府県議会に行った(詳細は「沖縄発 新しい提案 辺野古新基地を止める民主主義の実践」2018年5月、ボーダーインク)。

そして、現在、全国の30議会で陳情採択・意見書可決がされている。

全国キャラバンの名称及び目的からも、知事が出席して訴えるシンポジウムという形以外でも、全国の市町村に何らかの形で訴えてほしい。そのためには、知事にぜひ、キャラバンの一環として、全国の市町村宛で書簡を送り、全国の市町村で独自にシンポジウムや意見書の採択など自分たちが住む町でこの問題を全国の問題として考えるよう呼びかけてほしい。著者も同様のことを大正区で行われるシンポジウムで知事に訴える予定だという。

著者の言葉は詩的であり、哲学的であり、独自の響きを持つ。民主主義や平和について真理を照らしている。それは、大正区の歴史と共に生き、先人の想いを共有し、沖縄人として日本人を生ききってみたいと宣言する著者の「多元的」な生き様そのものかもしれない。

そして、同様にヤマトに生きた沖縄の詩人山之口貘の「夜景」にこう重ねる。

<あの「基地」の寝様ときたら

まるで「沖縄」に抱きついて いるかのようだとおもったら

僕の足首が痛みだした みると、「日本」がぶらさがっている>

ぜひこの本に触れ、沖縄から遠く離れて生きてきた人たちに思いを馳せてほしい。そして著者の問いに向き合ってほしい。新たな視点が得られるはずだ。

【本稿は6月22日付『沖縄タイムス 』 掲載の書評を加筆しました 】

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