令和日本が向き合う諸相の縮図
それぞれの時代における日本政治の特質が過剰なまでに投影されてきた沖縄だが、令和初年のここに来て、むしろ沖縄を考えることから日本の未来が構想できると思われてならない。
「一強」政権の傍らで、日本が抱える最大の問題は長期的展望の欠如であろう。財政、社会保障制度の行く末に現政権が正面から向き合う気配はなく、外交・安全保障にしても抑止力強化一辺倒ではとても財政がもたない。「力による対抗」は勇ましいが、今後の日本にとっては不利になるばかりである。
広大な米軍基地と尖閣諸島をめぐる緊張、その一方でアジアから多くの観光客が押し寄せる沖縄は、令和日本が向き合う諸相の縮図である。「一強」のメンツにかけて新基地建設を遂行することが自己目的化しているが、逆に大規模な新基地を建設せずに済むにはどうしたらよいのかと問いを立てることは、日本の政治外交に発想の柔軟さとダイナミズムを取り戻す格好の糸口になる。
「辺野古代替案」ではなく、本来の目的である普天間基地の早期運用停止に政治の努力を集中することが肝要であり、東アジアの緊張緩和に向けた真摯な外交努力や構想力も環境整備として重要だろう。財政的なメリットは言うまでもない。いずれも沖縄のみならず、これからの日本にとって必須の課題ばかりである。
日米同盟を足場としつつも近隣アジアとの緊張緩和につとめ、アジアの旺盛な活力を存分に取り込む。沖縄にとって切実なこのバランスが、令和日本の舵取りにとっても要点になるはずだ。
【本稿は朝日新聞「あすを探る」(8月29日掲載)に一部加筆修正を加え、転載しました】