首里城再建をめぐる政治力学

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復帰20周年と首里城復元

 1992年11月、復帰20周年記念事業として「首里城公園」が開園。その年の初めから、新聞に首里城復元に関連した記事が載らない日はなかった。翌93年1月からは、NHKが17世紀の琉球王国を舞台とする大河ドラマ『琉球の風』を放送する。

補足すると、首里城公園は都市計画上、一つの公園として位置づけられているが、その整備は四つの事業主体によって行われた。

首里城城郭内側の、正殿の復元をはじめとする首里城跡の復元整備は、沖縄復帰記念事業として、国の国営公園事業とされた。城郭外側の整備は、沖縄県土木建築部の県営公園事業。また、沖縄県教育庁も、沖縄開発庁の補助金で首里城城郭等復元整備事業として、歓会門から久慶門にかけての城壁復元を手がけた。さらに、住宅・都市整備公団公園緑地部が、正殿に隣接する南殿・番所、北殿、奉神門などを整備する、特定公園施設整備事業を行う。借入金によって公園内の有料施設の整備を行い、利用料を借入金償還にあてる事業で、全国の国営公園で実施されている。

首里城再建をめぐる善意と政治

今回の首里城焼失を受け、那覇市は、首里城再建支援の寄付をつのっている。ガバメントクラウドファンディング「ふるさとチョイス」に開設された、「沖縄のシンボル『首里城』再建支援プロジェクト」は、11月1日の午後に開設されてから3日目で、目標の1億円を達成。募集は、来年3月末まで続けられる予定だ。

玉城デニー沖縄県知事は、首里城再建を「復帰50周年」事業として位置づける意向だ。1日に上京した玉城知事は、2022年5月までに再建計画を取りまとめたいと、政府の協力を要請した。菅義偉官房長官も同日の記者会見で、補正予算の計上も視野に入れた首里城再建の財政支援に言明する。

かつて首里城復元にかかった総事業費は、1986年の整備決定から2019年1月の全工事完了までの33年間で、約260億円にのぼる。このうち、今回焼失した正殿など7棟の復元整備は約73億円だった。

2022年は、沖縄振興計画の策定年でもある。沖縄振興計画とは、米軍占領下で沖縄の復興や経済発展が遅れ、また、全国の在日米軍専用施設の約70%が沖縄に集中しているという事情に鑑みて、国が実施する10年単位の経済振興計画である。2012年からは、沖縄県が策定主体となっている。

沖縄返還当時、各省庁の予算折衝などを経験していない沖縄県に配慮して、内閣府が、沖縄関連の直轄事業や交付金を「沖縄振興予算」として取りまとめた。内閣府沖縄担当部局が、沖縄県と各省庁との間に入り、各省庁の予算を一括計上して財務省に要求する仕組みは、現在まで続いている。このため、予算要求総額が見えにくい他府県とは異なり、総額がすぐ判明する沖縄関係予算が大きいように見える。

問題は、第二次安倍政権が、沖縄関係予算を普天間飛行場の辺野古移設とリンクさせてきたことだ。首里城再建の財政支援も、基地問題と無関係のまま進むとは考えにくい。善意ではなく冷徹な政治力学から、首里城再建を見すえる必要がある。

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