穀雨南風⑬~リベラルの罠

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ネット上にはもうひとつの沖縄がある。

何かというと、攻撃的な言動やフェイクにさらされるのだ。

沖縄で反対運動をしている人の多くは沖縄の住民ではない、日当をもらって仕事として参加している本土の活動家だ。その裏には中国がいて、翁長元知事は中国とつながっていた。

そうしたことをどれだけの人が信じたのか、わからないけれど、何度も目にしているうち潜在意識のようにすり込まれないとも限らない。

おととしの県知事選挙でも、フェイクニュースが飛び交った。これに対して琉球新報などが行ったファクトチェックの試みには敬意を表したい。

 しかしこうした冷静な対応よりも、ネット上では「眼には眼を」といった応酬が広がりつつあるように感じる。

 たとえば誰かがツイッターで攻撃的なつぶやきをする。似た考えを持つ人たちはそれを歓迎し、リツイートを繰り返す。逆の立場の人たちはそれに反撃するため、やはり強い言葉を繰り出し、仲間たちがそれをリツイートする。

トランプ大統領を考えるとわかりやすいだろう。

自分にとってまずい状況になればなるほど、トランプ大統領は攻撃的なツイートを多発する。嘘や誇張にあふれていても、支持者たちには関係ない。ウクライナ疑惑を「魔女狩り」だと断ずれば、「そうだ、そうだ」と無批判にリツイートを重ねていく。これに対して反トランプ側も、負けじと強い言葉で応戦する。

トランプ支持者たちの中には、それまでホワイトハウスを仕切ってきた人々や、自分たちを無視してきたワシントンのエリートたち=議員や大手メディアに対して、強い不信感を抱いている人が少なくない。そうした心理も、トランプ大統領のつぶやきであれば、事実かどうかに関係なくリツイートすることにつながっているのだろう。

やっかいなのは、トランプ大統領の言動に「むき出しの本音」が含まれることだ。たとえば差別用語を公の場で口にするのは、タブーとされてきた。多民族国家であるアメリカでは、差別的な発言を禁じるポィティカル・コレクトネス(=政治的、社会的な公正性、中立性)に敏感にならざるを得なかったのだ。

ところがトランプ大統領はそんなことおかまいなしに、差別用語を連発する。差別の匂いのする発言を発しようものなら、鬼の首をとったように批判される風潮にうんざりしていた白人たちは、トランプ大統領の姿勢に快哉を叫んだのだ。

差別用語だけではない。アメリカファーストというフレーズも、まさにむき出しの本音と言える。自分の国が一番。自分の置かれた経済的な状況に不満を持つ国民にとっては、人種に関係なく心地よく響くフレーズなのだろう。

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