司法が認めた沖縄戦の実態②

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瑞慶山弁護士の言葉

この裁判のきっかけは、瑞慶山弁護士だったとは既に書いた。当時、千葉県が拠点の瑞慶山弁護士は、東京大空襲の訴訟に関わる中、沖縄戦被害についても調査を深めずにはいられなくなったという。

「沖縄県内で国に対する法的責任の追及が全く行われていないことに驚愕した」

瑞慶山弁護士は沖縄に戻り、電話で法律相談を始めた。

「きめ細かく、当時の経験を話してほしい」

そういう思いだったという。その結果、被害者の声が集まる。そして2012年8月15日、提訴となった。

 瑞慶山弁護士は私に言った。

「沖縄戦の悲しい物語を聞いて、それで終わりにしてはならない」

衝撃だった。

確かに、この日の原告の陳述を聞くと、その惨状に圧倒され、悲しさでいっぱいになってしまう。なぜ、被害を受けたのか、なぜ戦後、国から何らの謝罪も補償もないのだろうか、こうした疑問を持つまでには至らない。瑞慶山弁護士は聞く側に思考することを求める。

瑞慶山弁護士は更に言った。

「沖縄戦被害は過去のことではない」

私はその言葉の意味をわかった・・・と、その時は思っていた。しかし、本当にわかったのか、自問が始まる。この裁判を追う中で、この言葉の意味をつかもうとした。「沖縄を孤立させない」との思いでマイクを握ったその日以降、法廷が開かれるたびに大阪から沖縄に行った。それは沖縄を「孤立させない」という思いからだったが、私は沖縄で裁判を通じてその瑞慶山弁護士の言葉の意味を考えることとなる。私がこの連載を書くことを決めたのは、この瑞慶山弁護士の言葉の意味を多くの人と考えたいためだ。

連載2回目の今回、私のことを書かせて頂いた。次回からが本番だ。「司法が認めた沖縄戦の実態」。更に、詳しくみていきたいと思う。(続く)

【本稿は『InFact』からの転載です】

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