コロナ禍の沖縄~「危機の本質」を見極める

この記事の執筆者

押し寄せる新型コロナウイルスの脅威と、国の辺野古新基地建設工事のゴリ押し、さらには中国公船の尖閣への領海侵犯……。沖縄は幾重もの荒波に同時に見舞われている。こんなときだからこそ、「危機の本質」を見失ってはならない。

「観光がリーディング産業の沖縄県において、渡航自粛要請が本県に及ぼす影響は決して小さいものではないが、県民の命と健康を守ることが最優先だ」

国が新型コロナウイルスに関する緊急事態を宣言した翌日の4月8日、沖縄県の玉城デニー知事は険しい表情で、県外から沖縄への渡航を自粛するよう呼びかけた。

この前後から、普段は観光客らでにぎわう那覇市の国際通りの歩道には人気がなく、ほぼ全ての店がシャッターを降ろすようになった。那覇空港のロビーも閑散とした状態が続く。

連休前の4月27日、玉城知事は再びこう訴えた。

「連休中に沖縄へ来る予定の全ての人に心からお願いする。愛する沖縄とあなた自身を守るため、どうか今は来沖を控えていただき、終息後に笑顔で沖縄に訪れてほしい」

観光立県の沖縄が来県自粛を要請するのは苦渋の選択だった。

沖縄大学の島田尚徳講師(公共政策論)は、沖縄の経済事情をこう解説する。

「1人当たりの県民所得が全国平均の7割弱の沖縄県では、産業振興は非常に大きなテーマです。とりわけリーディング産業である観光リゾート産業が打撃を受ければ、県内景気への悪影響が懸念されます」

沖縄の2018年度の観光収入は7340億5600万円。6年連続で過去最高を更新し、好調な沖縄経済を牽引してきた。観光リゾート分野は宿泊・飲食サービス業など関連産業のすそ野が広く、ホテル建設など新規投資も活発に行われてきた。観光客の流入が途絶えたことによる打撃は計り知れない。

2016年の国の経済センサス活動調査によると、沖縄の宿泊・飲食サービス業の事業所数は9694事業所、構成比で17.1%(全国平均12.3%)だ。宿泊・飲食サービス業で働く人も6万658人で、従業者構成比で11.9%(同8.7%)といずれも全国平均を上回る。

沖縄経済は中小・零細企業が支えてきた。従業者数5人未満の事業所は全体の61.2%(全国平均56.8%)、宿泊・飲食サービス業では実に68.4%(同57.9%)を占める。島田さんは言う。

「経営体力の弱い中小・零細企業ほど新型コロナの影響を大きく受けるのは明白です。今後も観光リゾート産業をリーディング産業と位置づけていくのであれば、沖縄県は他県以上に迅速で大胆な支援策を実行していく必要があります」

沖縄本島以外に37の有人離島を抱える離島県ならではのリスクもある。離島の石垣市では飲食業の男性感染者が多数と濃厚接触していたとみられることから、4月16日に市独自の緊急事態宣言に踏み切った。医療体制が脆弱な離島で感染者が相次ぐと、医療崩壊がなだれを打ちかねないリスクがあるのだ。

この記事の執筆者