政府が秋田、山口両県への地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画停止を決めたことなどをきっかけに、安倍政権が沖縄で推進している辺野古新基地建設にも疑問の目が向けられている。背景には、新型コロナウイルス対策に巨額の国費を投入するため、防衛費を圧縮せざるを得ない政府の事情がある。
「開発の費用や期間を考えれば、残念ながら配備は合理的でないと言わざるを得ないと判断した」
6月15日の会見で河野太郎防衛相がイージス・アショアの配備計画を停止する理由に挙げたのは、迎撃ミサイルを打ち上げた際に切り離す推進装置「ブースター」の落下だ。候補地の山口県に対し、防衛省は自衛隊の演習場内にブースターを確実に落下させると説明してきたが、「ハードウェアを改修しなければ、確実に落とせると言えなくなった」(河野氏)というのだ。
イージス・アショアは本体2基の購入費や30年間の維持費など、米国への支払い分だけで4664億円を見込んでいた。ここに用地取得費用などが加わる上、ブースターを演習場内に落とすための技術改修には2200億円以上を要すると試算され、停止の判断に至った。
沖縄県の玉城デニー知事は翌16日、「コストと期間を考えたら、辺野古の方がより無駄な工事ではないか」と政府の二重基準を批判し、「普天間(飛行場)は即時閉鎖、返還、運用停止を」と訴えた。
辺野古新基地建設について国は昨年12月、工期はこれからさらに12年かかることや、2014年時点で「少なくとも3500億円以上」としていた総工費も9300億円に修正した、と発表。イージス・アショアを上回る巨額の血税が注ぎ込まれるが、政府は推進姿勢を変えていない。
玉城知事が記者団に話す前に、ツイッターで15日に「辺野古見直し」を発信した自民党国会議員がいる。長島昭久氏だ。
〈『コストと配備時期』が理由というなら、あと15年もかかりコストは青天井の辺野古移設計画も同じように決断し、10―15年先を見据えて真に役に立つ防衛装備に国民の税金を有効活用してほしい。〉
長島氏といえば、ワシントンに豊富な人脈を持つ安全保障通というイメージが強い。真っ先に浮かぶのは、普天間飛行場の移設先は「最低でも沖縄県外」を掲げた2009年の鳩山内閣で防衛政務官を務めた経歴だ。内部告発サイト「ウィキリークス」が暴露した米秘密公電によると、鳩山由紀夫民主党代表が首相に就任した直後の09年10月、鳩山首相の命を受けた長島議員が防衛省高官とともに、非公式の日米協議に臨んでいたことも明らかにされている。
長島氏は「辺野古」に回帰した菅内閣や野田内閣でも防衛政務官や防衛副大臣を務め、現在に連なる防衛政策の立案、整備に深くかかわってきた。17年4月に民主党を離党。離党を決意した最大の理由として、共産党との選挙共闘という民主党の方針が受け入れ難く、「保守政治家として譲れない一線を示す」ためだったとブログにつづっている。その後、小池百合子都知事が立ち上げた「希望の党」に合流。長島氏は希望の党の解党後、無所属などを経て19年6月に自民党に入党した。
現在、衆議院安全保障委員会の筆頭理事を務めるとはいえ、民主党からのくら替え組の長島氏は、自民党では「外様」の印象がぬぐえないのも事実だ。