住民保護なしに進む自衛隊の南西配備と日米地位協定

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住民保護が欠落した国防

中国脅威論や自衛隊の南西配備の前にまず、有事に国が沖縄島嶼の住民を保護する仕組みづくりや、どうすればその実現が可能か検討するのが先だったはずだ。いつのまにかなくなったが、少なくともJアラートでは、沖縄島嶼住民の命は守れない。

米軍の場合、朝鮮有事には、米海兵隊が自国民の保護・避難任務を担っている。日本にも、島嶼防衛のため2018年に陸自の中に創設された、「日本版海兵隊」と呼ばれる水陸機動団が存在するが、現在は沖縄の離島ではなく、長崎県佐世保市の相浦駐屯地に駐留している。

しかも、現在の水陸機動団は、輸送手段を持っていない。当初、佐賀空港に配備されるはずだった輸送機MV22(通称オスプレイ)は、地元の反対で、配備先を千葉県木更津駐屯地に変更。それも地元の反対で、配備が2020年7月までずれこむ。それまで陸上自衛隊のオスプレイは、アメリカのノースカロライナ州で訓練や整備を行っていた。

木更津への配備は、地元との取り決めで「暫定的」なものとされ、防衛省は5年以内に当初の計画どおり佐賀空港への配備を目指している。しかし、地権者との交渉が必要で、その後の施設整備の工期も確定していないことから、現時点で時期の見通しは立っていない。このような状況では、たとえ国民保護法を改正しても、「日本版海兵隊」が住民の保護・避難任務を担うことは不可能だ。

国民を守るための国防ではなく、国民の命を危うくする国防になっている。それが南西配備の問題のすべてではないか。

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