海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか【下】

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自衛隊との連携?

海兵隊は、自衛隊との協力を重視しているようだ。バーガー総司令官は、7月23日の時事通信の電話取材で、自衛隊が水陸両用車やオスプレイ、F35など相互運用性のある装備を保有しているので、海兵隊と自衛隊は「完全に補完しあう関係だ」と強調し、南西諸島での自衛隊との合同演習にも意欲を見せたという(時事ドットコムニュース、2020年7月25日)。

 バーガー総司令官の考える作戦では、海兵隊は同盟国の兵力と一体となることが目指されている。彼によれば、海兵隊の部隊は「彼ら(同盟国)の間に非常に分散し、あなた(海兵隊)は彼らとともにいる」ことで、「パートナーや同盟国を安心させる」という(USNI News April 2, 2020 )。

 自衛隊もまた、海兵隊との協力を重視している。もともと陸上自衛隊は、海兵隊と1970年代以降、共同訓練・演習を通して太いパイプを持っている。日本政府・自衛隊は、沖縄の海兵隊を、「在日米軍唯一の地上戦闘部隊」として重視してきた(野添文彬『沖縄返還後の日米安保』吉川弘文館、2016年、197-198頁)。近年では、離島奪還作戦を専門とする「日本版海兵隊」というべき、水陸機動団の発足にあたっても海兵隊が協力している。

昨年2019年8月20日、バーガー総司令官が初の外遊先として日本を訪問した際も、湯浅陸幕長は、海兵隊がEABOを展開する上でⅢMEFを重視する点について、「我々とも非常に親和性があると思っている」と述べた。そして、陸上自衛隊として、ⅢMEFと連携してインド太平洋地域の平和と安定に連携して努力したいと述べたという(『航空新聞社』2019年8月21日)。

 元陸将の渡部悦和氏も、海兵隊のEABOは、離島を拠点に対艦ミサイルや対空ミサイルで中国軍の作戦を妨害するという点で「自衛隊の南西防衛構想と共通点がある」と評価している。その上で、「自衛隊、特に陸上自衛隊は米海兵隊の大胆な改革から多くのことを学ぶべき」だと強調している(渡部悦和・佐々木孝博『現代戦争論―超「超限戦」』ワニブックス、2020年、213-214頁)。

 日本政府内では、2020年代前半、水陸機動団のうち、今後新設される三つ目の連隊(600人規模)を、キャンプ・ハンセンに配備することが考えられているという(『朝日新聞』2017年10月31日)。すでにキャンプ・ハンセンでは基地の共同使用が進んでおり、陸上自衛隊が演習を行っている。現在、キャンプ・ハンセンは、第12海兵連隊と31MEUの拠点となっている。上述のように第12海兵連隊は海兵沿岸連隊へ再編される予定だとされており、ここに自衛隊の水陸機動団が配備されれば、自衛隊と海兵隊は中国をにらんでさらに連携を強化することになるだろう。

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