辺野古の新基地建設に向け、防衛省沖縄防衛局が沖縄県に提出した工事の設計変更承認申請の内容が、思わぬ波紋を広げている。埋め立てに使う土砂を、沖縄戦の激戦地だった沖縄本島南部から採取することが新たに盛り込まれたからだ。
「戦没者に対する冒とくです」
こう憤るのは、那覇市の沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(66)だ。設計変更は埋め立て予定地の大浦湾に広がる軟弱地盤が発覚し、大掛かりな地盤改良工事が必要になったことから今年4月に沖縄防衛局が県へ申請した。県は9月に申請書の内容を公開し、利害関係人から意見を募る「告示・縦覧」を実施。具志堅さんは「沖縄本島南部の石灰岩地域は岩ズリ(破砕された岩石)を採取するために破壊してよい場所ではない。戦争で亡くなった人の遺骨を岩ズリと一緒に軍事基地を造るために埋め立てに使うなど言語道断」と訴え、県に設計変更申請の不承認を求める意見書を提出した。
サンゴ礁の海に囲まれた沖縄には石灰岩の地層が至る所にある。本島南部では石灰岩を削った砕石場や道路工事、農地改良などの現場で破砕された遺骨が見つかるのは珍しくない、と具志堅さんは言う。
「私たちが普段遺骨を収集している本島南部は沖縄戦で多くの兵隊や住民が亡くなった場所です。この現場で『これ遺骨だよ、わかる?』って目の前で指をさしても一般の人にはたいてい見分けがつきません」
石灰岩の地層に埋もれている遺骨は同色のためほとんど見分けがつかない。地表に露出した遺骨にも苔が生えるなど、見た目には周囲の岩などと区別がつかなくなる。遺骨はばらばらの状態で見つかることが多く、形状も崩れているため、30年以上遺骨収集をしている具志堅さんですら手で持った重さでようやく判別できることが多いという。
「骨は石灰よりもずっと軽い。手に持って軽さを確認して、ああー骨なんだとわかるんです」
具志堅さんは昨年糸満市で、約5年前には八重瀬町で、それぞれ全身の骨格がほぼそろった兵士の遺骨を確認した。いずれも本島南部の砕石業者が破砕前に気付き、連絡をくれたのだ。
「遺骨は地面と同化しているため重機のオペレーターも遺骨と気づかないことが多いのですが、このときはほぼ完全な形で見つかったため、何とか破砕を免れました」