1月25日、26日付の沖縄タイムスは、共同通信との合同取材で明らかになった事実として、陸上自衛隊(以下、陸自)と米海兵隊が、キャンプ・シュワブに陸自水陸機動団を常駐させることで合意していたと報じた。
民主党政権が主導したものの、防衛省全体の決定をへずに合意された計画は、一時凍結されており、加藤勝信官房長官は会見で、現在は「報道のような計画は有していない」と否定した。岸信夫防衛大臣も、「いま全くそんなことは考えていない」と回答している。
報道された事柄に関する問題は、大きく分けて二点挙げることができる。どちらも南西防衛が抱える根本的な問題だ。
ちなみに南西防衛とは、民主党政権下で尖閣諸島をめぐる日中間の対立が高まったのを機に、「自衛隊配備の空白地域」である、沖縄を中心とした南西諸島への自衛隊配備を進めようとする計画だ。キャンプ・シュワブへの水陸機動団常駐計画も、南西防衛の文脈で出てきた。2021年2月現在、与那国、奄美大島、宮古島に陸自が配備され、今後は石垣島と馬毛島での自衛隊基地建設が予定されている。
兵站・補給の脆弱性
問題の一つは、兵站・補給拠点や訓練場所が不足している問題である。軍隊にとって、平時の訓練場所と兵站・補給の確保は死活問題であるにもかかわらずだ。
冷戦時代、ソ連の侵攻に備えて陸自は北海道を中心に配備されたため、陸自の装備供給や修理を行う工場群や弾薬庫も北海道に集中してきた。2010年の防衛大綱に初めて南西諸島に必要最小限の部隊を配備する方針が記載され、2016年の与那国島への陸自配備を皮切りに順次、鹿児島・沖縄一帯の離島に陸自が移転しているが、兵站・補給拠点の確保は予算不足で進んでいない。
特に陸自の弾薬庫は、九州では大分県と熊本県、奄美大島、沖縄県では那覇と与那国島に限られている。現在、宮古島で弾薬庫を建設中(予定では2020年度末までに完成)だが、陸自駐屯地から約10キロメートル離れている。
しかも宮古島では、防衛省は住民に対して、駐屯地に持ち込む火器は「小銃弾や発煙筒など」と伝えていたが、実際には中距離多目的誘導弾や81ミリ迫撃砲弾といった威力の大きな砲弾を持ち込む計画だったことが、東京新聞の特報で発覚。自衛隊配備に賛成する住民も反発した結果、搬入済みの迫撃砲弾などは現在撤去されている。
広大な北海道とは異なり、自衛隊基地と民家が近く、また沖縄戦の記憶が残る住民の反軍感情も強い南西諸島では、ミサイル部隊の訓練は困難であり、米国本土まで訓練に行かねばならない。このような状況で、海兵隊の弾薬庫があり、水陸機動団に不可欠な上陸訓練などもできるキャンプ・シュワブへの常駐を陸自が望むのは不思議ではない。「陸の独走」で片づけると問題の本質が見えなくなる。