南西防衛の問題点とは―兵站・補給、米中戦争の最前線、馬毛島―

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新たな南西防衛の拠点、馬毛島

1月31日に投開票された鹿児島県西之表市長選・市議選では、馬毛島への自衛隊基地建設・米空母艦載機訓練計画に反対する現職の八板俊輔市長が再選し、市議会もかろうじて反対派が過半数を制したが、防衛省が変わらず計画を進めるとしている馬毛島も同様だ。

馬毛島に建設予定の軍港は、奄美大島の代わりに強襲揚陸艦などを寄港させることが想定されているが、馬毛島付近の海域はしけが多い。冬になれば何週間も船を出せないこともざらだ。2020年12月に始まったボーリング調査も、しけの影響で開始が二週間遅れた。馬毛島に自衛隊基地ができれば、常駐する自衛隊員は種子島の官舎から海上タクシーで馬毛島に通勤すると、住民説明会では説明されている(海上タクシーを請け負う種子島漁協への利益供与の意味合いがある)。だが、毎日通えるような海ではないため、現実的だとは思えない。

可能性があるとすれば、水陸機動団の移動手段であるオスプレイの馬毛島配備だ。防衛省の計画では、水陸機動団が常駐する長崎県佐世保市の陸自相浦駐屯地に近い、佐賀空港にオスプレイを配備することになっているが、地元の漁協の反対で目処がたっていない。オスプレイは現在、千葉県の陸自木更津駐屯地に2025年までの期限つきで暫定配備されているが、木更津への配備も地元の反対で遅れ、オスプレイは2020年7月まですべて、米国のノースカロライナ州に配備されていた。

種子島の中種子町には、全長12キロメートルの白い砂浜が美しい遠浅の長浜海岸があり、水陸機動団と海兵隊の共同訓練が毎年実施されている。長浜海岸から約3キロメートル先には、現在使われていない旧種子島空港もある。共同訓練では、輸送艦からボートで上陸した水陸機動団が、一般道を徒歩で空港まで進むのと同時に、海兵隊・水陸機動団が輸送ヘリで空港に降下、敵の拠点を奪取する戦闘訓練を行っている。

すでに訓練実績があり、自衛隊基地の建設計画にも町をあげて賛成、自衛隊官舎の誘致運動を展開している中種子町を拠点に、旧種子島空港と馬毛島をオスプレイで往復するのであれば、しけで海上タクシーが出せないという問題は解決する。ただ、種子島漁協への仁義や、「事故機」の悪名が名高いオスプレイの配備に対する中種町民の反発といった、別の問題は発生するだろう。

少なくとも、現行の計画では、馬毛島につくられるのは、またもや南西防衛の機能を十分にはたせない基地だ。不十分な基地をいくらつくっても、南西防衛の強化にはならない。

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