沖縄にある追加給付窓口
トランス・コスモスという東京に本社のある一部上場企業は、ファーストフードやカード会社など、幅広い業態の企業のコールセンター業務を請け負っている。その会社が沖縄県那覇市・沖縄市の2箇所のオフィスにそれぞれ、常時約40人のスタッフが追加給付に関する問い合わせに対応するスペースをもうけ、合わせて約80人が同時対応できる体制をとっている。
私がこの事実を知ったのは、トランス・コスモスの沖縄オフィスで働く人間から直接の証言を聞いたからだ。本人のプライバシーを守りトラブルを避けるため、その者の詳細について触れることは避ける。
追加給付に関する問い合わせ窓口は、沖縄のこの2箇所にしかない。貧困県といわれる沖縄の最低賃金は792円と全国一低く、東京の1013円とかなり差がある。人件費のコストをおさえるために、あえて沖縄においたと考えられる。スタッフの時給は、週5で働く派遣社員の場合1150円(週4だと時給1050円)。トランス・コスモスと直接雇用関係にある契約社員もいるが、そちらの給与は不明だ。
雇用保険等の申請窓口となり、振り込み手続きをするのは各地のハローワークだ。したがって、過去にハローワークで手続きをした人々の中から追加給付の対象、もしくはその可能性のある者が抽出され、厚生労働省からの「お知らせ」と書かれた通知書類が送られる。
追加給付が確定している場合には黄色い書類が届き、振り込み口座の確認を求められる。追加給付の可能性がある場合には水色の書類が届く。ハローワークに登録された住所と、住民基本台帳に記載された住所が一致しなかったり、オンラインで雇用保険等の手続きをしたため、ハローワークに住所の登録がなかったりする場合、水色扱いとなる。追加給付対象者に同姓同名や同じ生年月日の者がいた場合にも、本人確認を要するため水色の書類が送られる。また、追加給付対象者が手続きの前や途中で亡くなった場合、遺族に手続きを求める緑色の書類が届く。
圧倒的に多いクレーム
厚労省の名前で追加給付の通知書類が送られた次の日から約2週間は、トランス・コスモスの沖縄オフィスに、問い合わせの電話がひっきりなしにかかってくる。書類の不備に対する指摘。雇用保険等を申請した当時の記憶があいまいで、事実関係を確認したいという問い合わせ。複数ハローワークから通知書類が来たことへの相談。対象者が住所移転などにより、複数のハローワークから雇用保険等を給付されていた場合、各ハローワークがそれぞれ通知を出すためだ。
こうした問い合わせへの対応は本来業務であり、トランス・コスモスのスタッフも問題なくこなしていく。ただし、トランス・コスモスの業務として認められているのは、不備があった通知書類の再交付や、過去にどこのハローワークで対象者が雇用保険等の手続きをしたのか調べることだけだ。厚生労働省やハローワークの業務の進捗は把握していない。
しかし、問い合わせで圧倒的に多いのは、通知書類を受け取って追加給付申請をしたが、いつになったら振り込まれるのかというものである。実のところ、2020年10月末時点で、対象者のうち給付が完了した者は全体の4割にとどまった。そのため、「半年待たされている」「9カ月返事がない」というクレームが、トランス・コスモスの沖縄オフィスに殺到しているのだ。
2020年4月にコロナ感染拡大を受けて国が最初の緊急事態宣言を出した際、出勤制限がかかった厚生労働省だけではなく、各地のハローワークも業務を縮小あるいは閉鎖した。対象者の申請書類はいったん厚生労働省に送られて集約されるが、実際に追加給付の振り込み手続きを行うのはハローワークだ。そこもコロナ禍で追加給付業務どころではなくなったため、業務が滞っているのだ。
また、意外と多いのが、対象者が亡くなっているので、遺族が代わりに申請をした追加給付の遅れへのクレームだ。本人が確認や申請を途中まで行っていても、亡くなった場合には一からやり直しになるので、いつ給付されるのか分からないということが起きるという。
そのほかにも、2004年以降の雇用保険受給者が対象となっており、本人が過去に雇用保険を受給したことを忘れている場合も多いため、詐欺を疑う電話が頻繁にかかってくるという。