雇用保険の過少給付問題のつけが沖縄に

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続々と辞めていくスタッフ

トランス・コスモスは単なる民間のコールセンターにすぎないが、問い合わせの電話をする側には分からない。いきおい、「いつまで待たせるのか」から始まるクレームは、「なぜ答えてくれないのか」「民間企業ならこんなことはない」「役人はいつもこうだ」とヒートアップする。電話をかける側は厚生労働省に向けて言っているつもりだが、受けているのは民間企業に雇われている非正規雇用者という現実。

沖縄オフィスの管理職である正社員には本土から派遣されている者もいるが、電話を受ける派遣社員や契約社員は沖縄現地で採用されているので、沖縄ならではの苗字を名乗り、独特のイントネーションで話す。それを聞きとがめて、「お前どこで電話を受けているんだ」「どこの方言だ」と、スタッフへの個人攻撃に走るクレーマーも多い。あげく「沖縄の海に沈んでしまえ」などの暴言が飛び出すことも珍しくない。

証言者は追加給付業務に2カ月弱従事したが、辞める頃には、同時に働き始めたスタッフはほぼ全員いなくなっていたという。沖縄の中ではかなり時給の高い仕事でも、自分と無関係の厚生労働省への怒りを代わりにぶつけられ、電話の相手にもトランス・コスモスにも厚生労働省にも文句を言えず、ただ謝り続けることにみんな耐えられなくなるのだ。

トランス・コスモスによるメンタルケアじたいは、それなりに手厚かったという。常時、正社員と直雇用無期契約の契約社員あわせて5人程度が、管理職としてオフィスにおり、問い合わせの電話が長引くと、電話を一緒に聞き始める。まずいと思ったら、スタッフのそばに来て指示を出す。場合によっては電話を代わることもある。電話中ではないスタッフに対しても、しょっちゅう「大丈夫か?」などと声をかける。定期面談もある。それでもスタッフはどんどん変わっていく。

派遣社員の男女比は、おおよそ3対7。大学生は少なく、契約社員・派遣社員の女性はほぼ主婦である。少数だが、定年退職した男性の小遣い稼ぎにもなっている。注目すべきは、沖縄に多い観光業や飲食業の仕事が成り立たなくなった人たちが、一定層いるということだ。雇用保険の給付を受けるべき者が、雇用保険等の追加給付の問い合わせ業務を行っているという皮肉。弱者が弱者を責めたて、本当に責められるべき厚生労働省は謝罪を外注してすませている。

※本稿は、『論座』に2021年3月14日に掲載された、「雇用保険の過少給付問題は終わらない 謝罪を“外注”する厚労省」の抜粋です。

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