現在、「重要土地等調査法案」が衆議院で審議中だ。今週にも強行採決されるかも知れないという。米軍専用施設が一極集中する沖縄を特段のターゲットにし、市民運動の弾圧と住民からの強制的な土地接収を可能にする憲法違反の法案だが、日本全体の問題意識は鈍すぎる。
全国世論の関心はオリンピック問題にあるようだ。今日、朝日新聞は大型の社説を掲載し、首相にオリンピックの中止を求めた。大会の「オフィシャルパートナー」が正面切って中止を求めたことに評価の声が集まっているが、問題を「オリンピック問題」と矮小化してはいけないように思う。
オリンピックの問題の根元には、現政権の生存権に対する無配慮と「安全」概念の歪みがある。国民生活を犠牲にしてまでナショナリズムと利権に染め上げられた大会を強行する政権に、平和的生存権を規定した日本国憲法を遵守しようという姿勢は全く見られない。
人命より国体を優先する現在の政権の態度は、戦中の政府・軍部と全く同じだ。それを共通原因として、現在様々な社会問題が噴出している。そして、それらの問題は全て、沖縄戦など、日本がかつて起こした戦争の歴史を思い起こさせるものである。
「重要土地等調査法案」が、沖縄戦時の強制的な土地接収と住民徴用を想起させるのは言うまでもない。ちなみに、同法案では内閣が恣意的に「国家安全保障上重要な土地」を指定出来ることになっているが、仮に沖縄島南部の鉱山が指定されれば、そこでの遺骨収集も土砂採取への抗議活動も出来なくなる。そうすれば、遺骨が染み込んだ土砂を用いた辺野古新基地建設強行だって、現実のものになるかも知れない。