東アジアの特異な国際関係
サンフランシスコ講和から70年を経た今日、東アジアは世界的に見ても特異な地域だろう。米ソ冷戦の終結に前後して、ドイツをはじめ世界的に分断国家は姿を消したが、中国・台湾、南北朝鮮という二つの分断国家と日本で形成されるのが東アジアである。
歴史や領土問題が絡んで、日中韓の軋轢ばかりが注目されがちだが、台湾と北朝鮮という存在を、どのように安定した地域秩序に組み込むかというきわめて重要な課題がある。
沖縄は、サンフランシスコ講和で日本から分離されてアメリカの軍事拠点と化した。冷戦下ではベトナム戦争への出撃基地となり、冷戦後も中東でのアメリカの軍事行動の足場として用いられた。そして近年では、北朝鮮情勢や台湾有事が沖縄の米軍基地の必要性と関連づけて語られる。「基地の島」沖縄という現状を解消していく未来を構想することは、東アジア国際秩序の行方を考えることでもある。
未完のサンフランシスコ体制という課題
サンフランシスコ講和条約の調印から50年の節目として、昨年、いくつかの新聞で特集が組まれた(講和条約の調印は1951年9月8日)。自民党で「国防族」の有力者として知られ、安保法制の主要な担い手でもあった高村正彦氏(元自民党副総裁)は、同講和条約について、「日本とアジア太平洋の発展の基礎となり、今では大半の日本国民が『正しいこと』と理解している」と、「軽武装・経済重視」の「吉田路線」とも絡めてその意義を高く評価する(『毎日新聞』2021年9月8日)。いわば、「成功物語」としてのサンフランシスコ体制である。
成功物語の来歴を祝うことは大変、結構なことと思う。しかし同時に、そこからこぼれ落ちた問題に向き合い、今日的課題として取り組むことが重要であることは言うまでもない。とりわけ、今日の東アジアでは、サンフランシスコ体制が安定的な秩序の構築という点で、「未完」に終わったことが、地域情勢に色濃く影を落としている。