いまこそ戦争の教訓を語り継げ―沖縄復帰50年の意義―

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目立つ歴史の歪曲

ウクライナ情勢に便乗した、日本の政治家や安全保障専門家の発言が目立つ。ロシアの軍事侵攻で台湾有事の可能性が高まった、という議論もその一つだ。気になるのが、自衛隊関係者が中心になって、「住民を守り切れなかった沖縄戦の痛恨の教訓を繰り返してはならない」と、沖縄戦をひきあいに、中国に対する抑止を高める南西防衛の重要性を強調していることである。

私は、自衛隊の幹部候補生を長年教えてきた軍事専門家から、「沖縄の人は沖縄戦の経験から、軍隊がいないと敵に攻められることが分かっているはずだ」と、言われたことがある。チョットナニイッテイルノカワカラナイ(お笑いコンビのサンドイッチマンのネタ)。

今年3月に沖縄で講演を行った河野克俊・元幕僚長は、「当時の沖縄県知事が住民を疎開させるのが遅れたせいで、民間人の被害が拡大した」と発言している。実際には、反対する知事を更迭して、労役や戦闘の足手まといになる者を除き、民間人の疎開を許さず根こそぎ動員したのは日本軍である。

南西防衛を進めるために沖縄戦を持ち出すのは、歴史への無知か意図的な歪曲だ。歴史を歪曲して都合の良い自説を展開するのでは、プーチン・ロシア大統領と変わらない。犠牲を考慮しない戦争が何をもたらすのか。それこそが東京大空襲や沖縄戦の教訓だ。今年はサンフランシスコ講和条約発効70年、沖縄復帰50年となる節目でもある。いまこそ歴史に学ばなければいけない。

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