東京の空はとても高い。高くて広くて、時折見るのは旅客機だけだ。
娘も「こっちの空うるさくないね。」と現状を理解する年齢になった。東京に来て空を見上げる事がほとんど無くなった。沖縄では米軍機が怖くて、うるさくて嫌で嫌で、日に何度も空を確かめた。
沖縄の空があんなにも近くに感じたのは、米軍機が間近で離着陸し、低空を飛行していたからだ。落ちるんじゃないかと思うほどの距離。東京ではたんぽぽを娘がふぅっと吹いても、その先に米軍機は飛ばない空。
2017年、当時娘が通っていた保育園に米軍機からの落下物事故があった数日後、米軍機が飛び交う空に向かい娘がタンポポの綿毛を飛ばし「ぼうけんがんばってねー。」と手を振る姿を思い出した。悔しいな、同じ空なのにと思う。
2007年、私は仕事の転勤で沖縄から上京し関東圏を転々とした。
どこへ行っても自己紹介の際、沖縄出身だと言うと熱烈に歓迎された。沖縄が大好きで、身近に沖縄出身の同僚ができて良かった、とよく言われた。転勤が決まった時、先に東京で勤務していた先輩から「沖縄出身って言ったらみんなすぐ声をかけてくるよ。」と言われたが、その言葉通りだった。
関西支社の研修でも挨拶をすると、すぐに人が集まり羨望の眼差しで沖縄出身を歓迎された。沖縄から出てきたばかり、誰も知り合いがいない環境でも、沖縄出身だという事ですんなり受け入れてもらえた気がして、ああ、沖縄出身で良かったなと安堵したの事を覚えている。
数十年前は少なくとも私の周りはそんな感じだった。その中でよく言われたのが「色が白いですよね。」だ。私は生まれた時から肌の色が白い方だ。沖縄の人=常夏の日差しでこんがり焼けた小麦色の肌、という先入観なんだろうか。
「なんで焼けてないんですか?」「沖縄の人なのに色が白いですよね。」とよく言われた。そして目が大きく目元がはっきりとして彫りも深い。「エキゾチックですね。」と言われた事もある。「目がぱっちりしていて沖縄らしいけど、有希子さんはこの中で(会社の集まり)1番色白ですね。」と言われた事があった。
えっ?アンバランスなのか私は?褒められているのか?
悪い事を言われた気はしない。でもな…何かひっかかる。沖縄はこうだ、というイメージを決め付けられたような違和感。
しかし当時はまだ20代。沖縄を好きと言ってもらえ、羨ましがられるというこしょばい(くすぐったいような)気持ちで、「え?沖縄の人でも白い人沢山いますよー。」と当たり障りの無い会話で終わらせていた。そうやってやり過ごした20代から30代半ば。そして2015年沖縄に帰ってきた。