「想定していなかった」「なし崩し的」…
駐屯地開設から約1週間後の3月22日、約1千人収容の市民会館大ホールで石垣市・沖縄防衛局・石垣駐屯地による住民説明会が開催された。
これまで開設前に説明会開催を求めてきた石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会は「要請になんの回答もない。住民説明会の名に値しない」「既成事実づくりだ」として参加を拒否、代わりに抗議文と公開質問状を提出した。
参加した市民は約170人(石垣市発表)と少なかったが、中には「どうしても言いたいことがある」として参加した反対住民も。駐屯地から数キロ離れた農村集落に住む60代男性が説明会で不満と不安をぶちまけた。
「(駐屯地隣接の集落は)手を出せばミサイルをさわれる場所になった。ほんとうに脅威。このことが頭から離れない。近くに住んでいる私たちの身も考えてくれませんか」
ミサイルを巡っては、昨年12月に閣議決定された安全保障関連3文書で反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有が明記された。
これを受け石垣市議会は同月、「自ら戦争状態を引き起こすような反撃能力をもつ長射程ミサイルを石垣島に配備することを到底容認することはできない」とする意見書案を賛成多数で可決している。
説明会でも「陸自配備に賛成する人も反対する人も、相手国を攻撃できる長射程ミサイルの配備は容認できないのではないか」との声があがったが、防衛局側は「具体的な配備先は決まっていない。大臣が国会で述べた通り」と説明するのみ。浜田靖一防衛相は、3月2日の参院予算委員会で「(地元に長射程は)配備しないとお話ししたが、いろいろ考えれば今後どのようになるか分からない」と述べており、配備の可能性を否定していない。
中山市長も長射程ミサイルの配備が計画された場合の対応について「今後開発されて配備という際には説明を聞いて判断したい」と述べるにとどめている。
7年前から陸自の沿岸監視部隊が駐屯する日本最西端の与那国島では23年度に電子戦部隊の配備が決まっており、さらに住民への説明もなくSAM部隊が計画され、国の23年度予算に用地取得費が計上されている。
島の過疎化解消や経済活性化を見越して自衛隊を誘致した前与那国町長の外間守吉さん(73)は「こんなことが起きるとは想定していなかった」「なし崩し的」(八重山毎日新聞2月16日付)と悔やむ。
与那国島に迎撃ミサイル、石垣島に反撃ミサイル──。「なし崩し的」にそうなるのだろうか。
【本稿は週刊AERA4月10日号記事を転載しました】